小説 | ナノ


新崎は実際あまり話したことはなくよく知らないのだが、悪い噂を耳にすることが多い。普段は噂など気にならないが俺に挨拶に来たこともないし、態度も悪いので噂通りという認定をしていた。だから新崎は好きではないのだが桐矢はどういう風の吹き回しで友達などと言ったのか。

依然女と遊んでいるようだから付き合っているという噂はただの噂だったようだ。

桐矢も悪い噂はあるのだが、親衛隊幹部クラスの人間がフられた腹いせに流しているということもよく聞く。共に仕事をしていた当時は事務的な会話しかしていなかったが仕事はこなすし、格段悪い人間だとは思わなかった。愛想は皆無だったが。

俺は女でも男でも頼まれれば抱いてやろうと思うのだが、こいつは男は完全拒否だから逆恨みをされたりするんだ。俺も桐矢も貞操無しという点では似たようなものだが、男しかいない環境では自分達には全くなびかないのに女に対してだけは見境ないのは気に入らないのだろうか。ネコの人間の気持ちはよくわからないが、さっきの女と俺の態度の差には確かにムカついた。こういうことなのだろうか。

変な奴。

気付いたら再び桐矢の寝姿を眺めていた。愛想の1つや2つをつけば過ごしやすかっただろうに。

するりと桐矢の頬を指の腹で撫でてみればさらさらとしていて肌質が良いのがよくわかる。今でこそ安らかだが、どうせ起きたらいつもの強張った不機嫌顔になるんだろう。こいつの笑顔は女以外にも向くのだろうか。

あぁ、また思考が止まらない。ていうか何で触ったりしてしまったんだ俺は馬鹿か。背もたれに体を預け、腕組みをして、目を閉じた。

今度こそ真灯留のことを考えて気を紛らわしたい。

いつになったら俺に甘えてくるんだ。



SIDE END


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