小説 | ナノ


ピピピピピピ――――…


目覚まし時計の響きで目を覚まさせられる。鬱陶しいそれをゆらりと腕を上げて重力に任せて止める。覚醒しきれていない、ぼんやりした視界に入って来たのはカレンダー。

今日は、8月31日だ。

1人住むアパートで小さく舌打ちをした。……帰りたくない。

今日までの約一ヶ月は見事に遊びまくった。朝から晩まで女の子と遊び、夜には女の子の家に泊まったり俺のアパートに連れ込んだりした。遊ぶ相手がいなければ適当にナンパするし、暇になることはなくとても楽しかったわけだ。悔しいが、彼女と呼べる子は出来なかったものの、連絡先を交換し、遊んでくれる女の子はたくさん出来た。

しかし、これも今日で終わり、学園に戻らなければならない。約2ヶ月前の理事長との約束が頭を過る。長期休み以外は学園で寮生活、出来なければ留年。

とてつもなく嫌だ。

俺はとりあえず朝食としてヨーグルトを食べ、歯磨き、洗顔と身支度を整えていく。そうこうしていると、帰らなくてもよくね?今日も遊びに行ってもよくね?という気持ちが芽生えてきた。

私服に着替えて髪をセットし、いくらかピアスを付け終わった頃にはあの学園のことなんかどうでもいいという思いでいっぱいになり、さっさと家を出て街に出かけた。

携帯で適当に遊んでくれそうな女の子を呼び出し、電車に乗って待ち合わせの駅へ向かう。

夏休みが今日で最後ということで人はこれまでよりは多くはなかったが、やはり都会、俺みたいなチャラチャラした奴であふれかえっている。駅で女の子を待っていると可愛い女の子がちらほらと通り過ぎて行き、話しかけようか迷ったが、やっぱり呼び出した女の子を大人しく待つことにした。


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