小説 | ナノ


制裁か。考えもしなかったけど、多分それはないだろう。名前書いてあったし、親衛隊ってアホだから正面突破でギャンギャン言ってくるイメージがあるからこんなまどろっこしいことしないだろう。椚の場合は知らないけど。あいつは食えない奴だ。

それに、俺の家に勝てるのって生徒会連中くらいだし、手を出す奴なんてほとんどいないだろう。

「平気だっつーの。何、羽根君は俺のこと心配しちゃってるの?」

不良は実は情が深いってか。からかうように言ったのだが、羽根はふざける様子はなく、きりっとした真面目な顔で、

「あぁ。」

と短く、しかしはっきりと肯定した。がっちり俺を捕える視線に目が離せない。何でこいつ、こんなに真剣なわけ?意外な返答にしばらく何も言えずに目を見合っていたが、先に反らしたのは俺の方。

昔、ある女の子が言っていた、イケメン(俺)に真剣な表情で見つめられると気恥ずかしいという気持ちが少しわかった。…どうしてこんな少女マンガみたいなことになっているんだよ。

「…はいはい、わかりました。でも行かない訳にはいかないから、お前、俺に何かあったらすぐ出て来いよな。俺ケンカ出来ないから。」

男なんぞに助けを請うなんてみっともないな。だが、こう言わないと羽根は納得しなさそうだし。

俺が言うと、満足そうに目を細めて笑う羽根。頭に手が伸びてくるのをひょいと後ろに仰け反って避ける。

「ガキ扱いすんなよ。」

苦笑しながらも楽しそうな羽根に不良っぽさは全く感じなかった。本当、何なんだっての。


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