dolce log&take | ナノ



捕食マイボーイ



金色に輝く月が、真っ暗な空にぽっかりと穴を空けたように浮かぶ夜。

さっきからわいわいとうるさいテレビを見つめたままで、なに一つ相手にしてくれない彼の後ろからゆっくりと手を伸ばした。
そして、四角い画面を見詰めけらけら笑う彼の体に手を回し、そのままぐいっと引き寄せ……

「っ……!?」


構ってほしいのもあったから、首筋にがぶり、と噛みついた。そりゃあもうがぶりと遠慮なく強めに歯を立てた。

当然、彼はそんなことされる…だなんて予想してなかっただろう。ごとんっ!と今までその手に持っていたテレビのリモコンを床に落として、突然首筋を走った痛みに顔を歪めたら即座に振り返った。
その目は涙で揺れている。


「っな、なにすんだよ…!」




何って……


「噛みたくなったから」


理由にしちゃ簡単かつ素直すぎるが、そう思っただけなのだから仕方ない。さわさわと片手で柔らかいうなじを撫でながら言うと、彼の体は小刻みに震えた。
そして率直な行動と感想を聞いた彼の眉間には深いシワが。
100%『はぁ?』っていう顔だ。



そんな顔したら可愛くないよ。


「噛みたいだけで本気で噛むなんて信じられない。最悪っ、てか離せよ」

「やーだ」

試しに腕をバタバタとさせたり体をよじったりしてみても無駄、そんな生意気な口を叩く子を離すわけがない。

大体、今回こんな馬鹿な行為に至ったのは俺のせいなんかじゃない。全て、責任は君にあるんだよ、緑川。

多分自分では分かっていないんだろうけど…。100%、君が悪い。


「早く離して」
「緑川しつこいよ」

「それはヒロトでしょ!?」

そんなやり取りを何回も何回もお互いに繰り返して流石に飽きた頃、ふと目に止まったのは噛みついた首から流れる赤い滴。
つつーと首を流れて鎖骨の窪みにたまっていく。見るからに痛そうだ。


「あ……、」

流石に遠慮はしなかったって言っても、若干手加減はしたし…そんなに強く噛みついたつもりはなかったんだけど。

じっと見詰める視線に彼は『ん?』と首を傾げて、また少し不機嫌な口調で問いかけてくる。

「え?なに」

「血出てきた」

その言葉に彼はぎょっとした。そして浴びせられるのは罵倒の嵐。

「っそんなに強く噛まないでよヒロトのばか!」


馬鹿は余計だと。
っていうか、ほんとに…俺のせいじゃないよ緑川。いい加減に気づいてほしいなぁ?


(でもまぁ血が出たのは悪かったかな……。)


顔の距離を詰めて、また首筋に近付く。そして一言。

「ごめん、ちょっとやりすぎたかな」


と言ってから止まることなく流れる赤い液体を伸ばした舌先で舐め取った。いつもより彼の首があったかい。
ついでに鎖骨の辺りも軽く舐め、舌先に広がる鉄の味を感じながら何度もそれを続けてみると彼は途端にふるりと震えてみせた。

ほら、君が悪いのはここだよ、ここ。分かる?
分からないのなら教えてあげるよ。


「ちょっと…っ、なに してんの…」
「緑川を舐めてる」

舐めても舐めても溢れ出してくる液体を懲りずに口に含むと、初めは少しだけだった鉄が更に増殖して気が付けば口の中はもう鉄の味しかしないようになっている。

そして彼の震えもちょっとずつ酷くなっていった、抵抗は感じられない。


「っ…んなのわかって…」

はぁ、と息を漏らす彼の頬は 赤い。話す言葉は途切れ途切れになっていた。


あぁ…、この子やっぱこうゆう免疫ゼロに近い。だから皆に弄ばれるんだよ。危機感がないから。


「顔赤い、どしたの?…もしかして思春期?」

「それはヒロトじゃんか!」

冗談混じりに呟いた言葉だったが、精一杯に怒鳴られてしまった。
まだ反抗する気力はあったらしい。だけど相変わらずグタッとしたまま、俺を見詰める。

もう限界が近いのかな。


「ね、緑川…いい?」

耳元で甘く囁く言葉に軽く乗せられるかのように彼は頷いて言った。

「今日だけ…だからな」


決して目をあわせることはないけれど、俯いたままだけど、超可愛い。
どれだけ拒否してても最終的にはいつも彼が折れてしまう。やはり、可愛い。それしかない。


そしてとりあえず、今夜は暇ではなさそうだ。

「うん、じゃあ…今日だけね」
「ん……」
「いただきます、」












捕食マイボーイ
(悪いのは可愛い貴方自身、だから責めないで)



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20000打おめでとうございます!

流星舞さまに捧げさせていただきました!ちょっとした甘…にしたつもりだったんですが、どうでしょうか><
気に入ってもらえたらいいんですが、また至らない部分あったら連絡ください^^* 書き直します!
これからもサイト運営頑張ってくださいっ応援しています(^ω^) そして私は日々stkしまs(やめなさい)

では、失礼しました^^


10.0603










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「現象α」のきおりさまより当サイト2万打記念という事で、恐れ多くもリクエストさせて頂いた物です!
こんな素敵な基緑を頂けるとは…!構ってやさんなヒロトに流されちゃうリュウジが堪らないです^///^ 思わずにやつきながら堪能させていただきました。
きおちゃんはやはり文章力が素晴らしくて羨ましい…!!甘く優しくそして切なく、情景など綺麗な文章でお書きになられて、作品を堪能させて頂く度にすごいなと思います。そして私の文章の拙さに気づかされます…。

転載許可も頂いたのでここに掲載させていただきました。
本当にありがとうございました!
そして、おいしい基緑ご馳走様でした!!


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