dolce log&take | ナノ



年賀企画 綱立文




*年齢操作(二人とも大学生くらい)
















辺りがまだ夜の暗闇に包まれている真夜中、手を引かれるが儘に外に連れ出されて。

マフラーを巻いても隠れない頬や鼻先や耳に触れる空気が冷たくて、先程まで眠気に襲われていた脳は程よく覚醒し出す。吐く息が白い、それが何故か綺麗だと思った。
肺いっぱいにその空気を満たしてみたくて、すぅっと大きくその空気を吸い込んでみたら、肺が澄んだような気がして。その空気が血液によって全身に運ばれ巡ってゆくのだと、覚醒したばかりの頭でぼんやりと考えた。


「しっかり捕まってろよ」
「はい」

火燵の中であたたまりながら年越しのカウントダウン番組をつけたテレビをぼんやりと眺めるのもいいけれど、綱海さんのバイクの後ろに乗せてもらって海まで出かけるのもいい。

後ろに跨がり、ヘルメットを被せられた頭をそのあたたかく大きい背中に寄りかけ、両腕でサーフィンで鍛えられた少し筋肉質な腰へとしがみついた。

エンジンをかけたのを合図に、バイクは走り出す。


未だ星がちりばめられたままの薄暗い空。去年もこうしてぼんやりと眺めたあの星々は確実に去年のそれとは違うもの。

彼の隣で過ごす年明けは、もう、何度目になるだろうか。

出会って初めての年明けは、それこそお互い眠気が勝ってしまって気付いたら朝だった。二度目から寝ないようにと夜風に当たりに行ったのが始まりで、温かい恰好で日の出を拝むまで語り明かすのが恒例になって。
近年はサーフィンの為にと免許を取った綱海さんのバイクの後ろに跨がって、こうして少し距離のある海までやってきて初日の出を眺めるのだ。

一時間ほど走らせては休み、再び走らせては休み、そうして二時間半ほどかけて(普通なら二時間もしないで着いてしまうが、俺の為にゆっくり走らせているからと休憩を取るらだ)来たのは、普段綱海さんがサーフィンをする為によく訪れているビーチだった。


「日の出はまだみたい、ですね」
「家出んのちょっと早過ぎたか?」
「…ですね、」

二人で砂浜に腰掛けて酷く静寂に包まれた暗い海を羨望しながら、そんな会話をして顔を見合わせ笑い合う。

「まぁ、間に合わねぇよりはいいか」
「はい」

こうやって静まり返った砂浜に腰を下ろし、二人で談笑をしながら次第に明るく澄んでいく海を眺めるのが好きだから、俺も待つ分には一向に構わなかった。



そうして持って来ていたあたたかい珈琲を飲んで温まりながら海を眺めていると、海の向こう側が微かに明るくなってきた。隣を見遣れば先程よりもはっきりと認識出来るその鮮やかな珊瑚の髪に、日に焼けて黒い肌。

「そろそろ、みたいですね」
「あぁ…」

一分、一秒毎に、真っ暗な闇のカーテンが敷かれていた空が白く、海がきれいに澄んだ青く、変化していく。この幻想的で綺麗な風景を、元旦の早朝に綱海さんの隣で眺められる幸せと言ったら。

そんな絶景にすっかり見入っていると、不意に砂浜に投げ出していた右手を拾われて、そしてゆっくり、自分より一回り大きくあたたかい手にそっと握られた。
もう何年もこういう関係にあるというのにも関わらず、俺の心臓は不意をつかれてどきりと高鳴る。

「つなみ、さん…!」
「見てねぇと、日が昇っちまうぜ」

促されるがまま海の方を向けば、向こう側からほんの少しだけ、まさに今顔を出した太陽と対面した。
海の水面をきらきらと照らし、辺りは一気に明るくなっていく。日光は暗さになれた目には眩しいけれど、とても美しい。

初日の出は、本当に綺麗だった。綺麗、という言葉だけでは言い表せないくらい。だけれどそれに当て嵌まる他の日本語を俺は知らないから、『綺麗』なのだ。

どんどんと昇って行く太陽が全貌を現し眩しいくらい日光を降り注いで、今年初めての朝を知らせる。そんな太陽を眺めながら、ぽろりと口から零れた気持ちが言葉になって。


「今年も、綱海さんと初日の出が眺められて…嬉しかったです」

繋がれていた手をきゅっと握り返し、そして彼の方を向く。

「今年も…隣に居させて下さい」

「…っ勇気…!」

綱海さんが珍しく余裕のない表情をしたかと思ったら、急に繋いでいた手を引き寄せられる。そして背中に手を回されてぎゅっと抱きしめられた。


「もうお前…可愛すぎ…俺がお前を手放すと思うか?」

「思いません、なんて答えていいんですか?」
「ったりめーだろ」




初日の出に誓う


(今年も、でなく『一生』を心のどこかで願っているのは欲張りですか?)

初日の出よりも眩しく美しい、そんな綱海さんの瞳をそっと覗けば、熱い視線と絡まって、そして優しく微笑んだその顔が近づいてきて、今年初めての触れ合うだけのキスを交わした。










end









*****

という事で、改めまして…
明けましておめでとうございます。
去年は当サイトに足を運んで下さいまして、本当にありがとうございました。そしてお年賀企画に参加頂きまして非常に嬉しく思います。
今年もどうかARMONIOSO改め『dolce』と管理人の私流星舞 咲をどうかよろしくお願い致します。

年頭から年齢操作モノで申し訳ないです…バイクで海まで出かけて初日の出眺める綱立でした。バイクの後ろに乗って綱海にしがみつくように抱きついてる(それも無意識)たちむとか可愛いですよね…!
綱立は希望者も少なく、結構好き勝手やらせていただきました。正月からちゅっちゅとかすみません…!少しでも萌えの手助けになれば幸いです。

ここを閲覧されている方のみに限り、この文章を1月15日までフリーと致します。お気に召された方いらっしゃいましたら、私の名前を添えて頂ければ結構ですのでご自由にお持ち帰り下さい。報告は任意です^^
配布は終了いたしました。

それでは長々と、ありがとうございました。


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