dolce log&take | ナノ
グラレゼ短編集
1日1文にて書いたもの総集編。
曼珠沙華
*グラ←レゼ
曼珠沙華の花。 例えるなら、あの方は鮮やかな紅に花弁を染めるその花のよう。
それは、人の全身を廻る液体のようにとても美しい色彩を放ち、人々を魅力する花。それは、気味が悪いほど綺麗に艶めき、細く不安定な茎を真っ直ぐ伸ばして奇しくそして儚く咲き誇る花。 その美しさも艶めかしさも儚さも憂いも、総てがまるであの方のよう。
でも、セカンドランクの自分がマスターランクの彼にそんな事言える筈もなく、ただ独り偉然と頂点に居座るその姿を眺めるだけ。
畏怖さえ覚えるそれを見て、自分は何を思った…?
寂しそう? 辛そう?
そんな馬鹿な。
ほんの少し前まで隣で一緒に笑いあった日々の面影はもうすっかり感じられない。もちろん自分も含めて。
曼珠沙華の花。 例えるならそれは、一本の茎で恍然と何処か寂しそうに花を開く、あなたみたいな花。
(いつかまた、なんて高望みは所詮無意味だと解っていても)
*****
最期の願い
*グラ←レゼ、病んでる
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ…私が、私が死にますから、どうか、どうかあなたの綺麗な白いその手を、真っ赤に穢さないで下さい
細くて白い指先から滴る赤い液体に舌を這わせて舐めとれば独特の鉄の味がした。その根源から際限なく流れ出る液体の色は、ちょうどあなたの髪の毛の色と似通っていて妖艶で美しい。手首には切り裂かれた痕。あなたがもう片方の手に持つ切れ味の実によさそうな刃物からも同じ液体がぽたん、ぽたん、と滴っていた。
なんで謝るんだい?別に、お前が死ななくてもいいんだよ。ただ、こんな自分に嫌気がさしただけなんだから
ぽつりと呟かれた言葉は、どこか楽しそうでどこか苦しい。
あなたの替わりに私が死にますだから、だから、あなたは綺麗で美しい大切なその体液を流して喜びを感じるなんて事はしないで下さい
何故か瞬きをする度頬には赤じゃない透明な液体が伝って、ぽろぽろと地面に転がってゆく。
どうして、お前が泣くんだ?
そう尋ねられたけれど、答えなど自分は知らなかった。ただ瞳から溢れて流れるその液体に、戸惑うばかりだった。
最期の願い
(どうか、聞き入れて下さらないでしょうか?)
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