dolce log&take | ナノ
基緑短編集02
1日1文にて書いたもの総集編。
定められた運命と言ふもの
俺達を縛る運命の鎖、則ち定めと呼ばれる物に囚われている。 その鎖は知らない間に巻き付いていて、気が付けばがんじがらめに絡まって取れない。俺はそれに気付いた時、こう思った。
あぁ、運命は決まっているのだ、と。
でも彼に出会ってから、例え運命に縛られて定められたレールを歩んでいようとも、俺達はその先に待ち構える出来事など予測がつかない。定められていようといまいと、その時を精一杯生きることが俺達人間の使命なんじゃないかって、思う。 俺が、運命に流されてもいい、そう思えたのは、
(緑川に出会えたからなんだ、)
だって、もし俺が運命に逆らっていたとしたら、もしかしたらだけど出会えなかったかも知れない。そんなの俺は考えられないし、考えたくもない。
もし、俺は緑川と出会えていない運命を歩んでいたら、誰を愛し、何をして、どう生きていたんだろう。 だから、君に出会えた事がとても尊いものだと感じされられる。
「精一杯、愛したい」
顎にそっと手を添えて口付けをひとつ。噛み付くように、角度を変えて何度も。舌も使って探れば、どんどん熱を帯びて熔けてしまいそうな程熱くなる。口の端から零れる唾液さえ愛おしい。
出会わせてくれた運命に誓って、
(精一杯、君を愛す)
*****
その色に、魅せられて
つう、と首から鎖骨にかけて、色白い肌を汗が滑り、それを胸元のユニフォームを引っ張って拭う。前髪を湿らす額の汗は右肩で吸い取られた。
無理もない、今日は炎天下。天気予報士が熱中症や脱水症状に気をつけるよう呼び掛けているのをテレビで見た。 今日は普段より監督やマネージャー達が、休憩や水分補給に随分と気を使っているのも伺える。 自分の全身からも、ただじっとしているだけなのに汗が滲む。ボールを追いかければそれは余計に出た。俺は額から頬に伝う一筋の汗をユニフォームで拭った。
サッカー男児に似つかわしいとはとても言えないその不健康そうな肌に、またうっすらと汗が滲んでいた。 とても白い、綺麗な肌。 ちらりと、ユニフォームが風に煽られて見えるその白い肌が、何故か気になってしまってしょうがない。 つい、ぼーっと見つめてしまっていたらその持ち主がこちらに気付いて、口端を微かに上げて目を細め、笑いかけられた。
「そんなに見られても、困ちゃうなぁ」
ふふっ、と柔らかく笑われて、思わずどきりと反応する心。
きっとさんさんと降り注ぐ太陽の陽射しは、あまりにも綺麗なヒロトの肌をどうしても焦がす事は出来ないんだ。
(俺の心はその白い肌に焦がされているのに、ね)
そして太陽は容赦なく降り注ぎ、炎天下に晒された俺の身体を焦がしてゆく。
*****
二人がいちゃいちゃしてるだけ
指先をそっと絡められて、伝わってくるのは優しいぬくもり。そちらを向けばくすっと柔らかく微笑んだ彼と目が合って、思わずはにかんでしまった。
最初はお日さま園で育った事があって兄弟みたいな関係だった。その殻を突き破ったのはいつだったろうか。次第にかっこいいと憧れを抱いて、自然と視線を彼に注ぐ。 彼に口付けを迫られて、初めて知った自身の中に存在する恋心。余裕じみた彼にただただ顔を赤くして俯く事しかできなかった自分の想いを絡めとられて実った初恋。 喧嘩したこともあった。すれ違ったこともたくさん。だけどその分もっともっとお互いを信頼できる。
二人で過ごす時間を今は一番大切にしてくれている彼。そんな彼は相変わらず余裕そうに、きゅっと握った俺の手を引き寄せて距離を縮めた。
「緑川…エロい事考えてるでしょ?」 「か、考えてない!考えてるのはヒロトのほうだろ!」 「だって緑川の顔、なんかエロいもん」 「…し、知るか!」
顔を背けた隙にごろんとベッドの上に組み敷かれて、上を向けば部屋の明かりで伺えない彼の表情がそこにあった。優しく瞳をぎらぎら光らせ、それが次第に近付いてくる。
ちゅ、とリップ音を立てるだけで離れた唇がほんのり甘さを遺して熱を帯びた。体が急に軽くなったと思ったら、その原因だった彼は俺の隣に寝転んでいた。
頬を撫でられて目を細めれば、ふふっと薄ら笑いをした彼に頭を抱えられた。 鼻を掠めたのは彼の匂い。
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