dolce text | ナノ
祝日
五月は休みが多いけれどそれが何の日だか気にしたことはなかった。せっかくいい機会だからとカレンダーの数字の小さな赤い文字を見つめてみる。
ちょうどそのカレンダーはおしゃれだか何だかで英語表記されていて、いまいちよくわからない。
三日には「Constitution Day」、四日には「Greenery Day」、五日には「Children's Day」と書かれている。五日は流石に知っているとしてその他がよく解らない。 日本人が解らない表記をするもんじゃないと思いつつ、知ってそうな人に聞く事にした。
「砂木沼さん、砂木沼さん」 「なんだ、一回で聞こえている」
ソファに座り本を読みながら珈琲を口にしていた砂木沼さんを呼びながら隣に腰掛ける。
「どうした?」
本とカップをテーブルに置いて、こちらを向いてくれる。
「えーっと…『こんすてぃとぅちおん』と『ぐりーんえりー』って何の日?」
問うと、何を言っているか解らないという顔をされる。無理もない、中学一年生の自分の英語能力を全部使って読んだ曖昧な発音だからだ。
「それは何だ?」 「カレンダーに書いてあるやつ。今月の三日と四日の赤い文字の英語」
ほら、とカレンダーを指すと、砂木沼さんはソファを立ち上がりカレンダーの近くまで行く。
「さっき真剣な面向きで眺めていたのはこれか、」
そういって砂木沼さんの口の端が少し上がり、ふっと笑われた。
「リュウジ、いくら何でもその発音はないだろう」
ソファに戻って来て座り、頭の上にポン、と優しく手を置かれた。
「中一の英語力じゃ無理だよ」
少し膨れ面をすると、縛っている髪の毛が乱れない様にそのまま頭を撫でられた。
「いいか、こう発音するんだ」
と、砂木沼さんは綺麗な発音で英語を読んだ。
「三日は憲法記念日、憲法が施行された日だ」 「出来たのは?」 「半年前の十一月三日だ。実施するまでの準備期間を半年取ったらしい」
お前はまだ習ってないな、と言って珈琲を口に含む。
「それで、四日は?」 「緑の日だ。聞いた事あるだろう?」
あぁ、そういえば。
「お前は姓が『緑川』だから覚えやすいんじゃないのか」
砂木沼さんが珍しく笑顔でそう言い、そうだね、と答えた俺はいつもの様にその細い腰に抱き着く。
「砂木沼さん、教えてくれてありがとう」
少し困ったように、でも満更でもないような笑みの砂木沼さんを見上げてお礼を言えば、また優しく頭を撫でられた。
「リュウジ、二人きりの時は、昔の様に名前でよいと言っただろう?」
「だってー…恥ずかしい…」
砂木沼さんの体に顔を埋める。顔が火照るのが自分でも感じられる。それどころか全体まで火照るくらい変に恥ずかしい。
「………お、おさ…む」
聞こえないくらい小さく呟けば、どうやら砂木沼さんの耳には届いていたらしく、上出来だ、と余裕な笑顔を向けられた。
そんなある日の祝日。
end
*****
初?砂緑。 リュウジはこんなにおバカな子じゃないですよね。でも憲法とか中学生が解る単語でもないです…。治さん何歳ですか本当にアンダー15ですか? 治さんは自分を慕ってくるリュウジを可愛い可愛いと思いつつツンデレてればいいと思います。 英語は自分の手帳からです。あと治さんとリュウジ、FFI前は同居してればいいよ(^q^)
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