dolce text | ナノ



韓国人のお話



「はぁ?…韓国?」

その話を聞いた俺は、思わずいつもより大きめの声で驚きを露にする。
「えぇ、そうよ」
晴矢が驚くのも無理ないわ、と瞳子姉さんが俺達…俺と隣にいる風介の顔を見据えて言う。


「韓国のファイアードラゴンから、あなたたち宛てに正式な依頼が来たの」

そう言って、封筒に収められた紙を丁寧に取り出し、そこに日本語でそのような内容の事が書かれていた。
まじまじとそれを二人で覗き込み、そして先に顔を挙げた風介が疑問を口にする。

「どうして、私達なんだ?」
確かにそうだ。俺達は雷門みたいに実績がある訳でもなければ、韓国に知り合いやつてがある訳でもなく、世間一般的にはただのサッカーをやっている中学生だ。


「それは、彼に聞いてみるといいわ」

ふっと笑みを浮かべた瞳子姉さんを見て、俺は風介と顔を見合わせる。俺同様に『彼』に心当たりがないらしいそいつは、眉間に皴を寄せて疑問の色を濃くする。

すると瞳子姉さんは、椅子から立ち上がって何やら部屋を去ろうとした。
「あっ…おい、どこ行くんだよ…」
その質問を投げかけたと同時に、玄関へと繋がる廊下の扉を開けて瞳子姉さんは誰かを招き入れる。

入って来たのは…


「っ…君は…!」
「あん時、雷門にいた…」

思わず二人で、がた、と椅子から立ち上がって驚きの声を発した。


そこにいたのは、元宇宙人だった俺達が、ダイアモンドダストで苦戦を強いられ、ザ カオスを組んだ時に病院送りとなったあの、アフロディこと亜風炉照美だった。


「やぁ、久しぶりだね」




つまりこいつは、俺達がイナズマジャパンに選ばれていない事を知り、戦った経験から俺達の実力を母国である韓国代表ファイアードラゴンに推薦した所、見事にスカウト許可が下りた、という事だった。


「しかし、よくも怪我させられた相手を推薦するものだ」

腕を組んでそう呟く風介に、アフロディはにこりと笑いかけて答える。

「僕を怪我させる程の実力を持つ君達が凄いと思って、ね」
あの時は参ったよ、とおどけたように笑って、椅子に座っている為に浮いている足をぱたぱたと動かした。


「それで、どうかな、僕達と一緒に戦ってくれないかい?」

身を乗り出すアフロディに、隣に座る瞳子姉さんが口を挟む。
「韓国代表として勝ち上がっていけば、いずれイナズマジャパンと戦える可能性があるわよ」


イナズマジャパン…、ひと足先にイナズマジャパンとして収拾され、現在合宿で不在のヒロトとリュウジを思い出して、思わず再び風介と顔を見合わせた。

「瞳子監督の言う通り、円堂くんたちはきっと勝ち上がって来るだろう。君達の大好きな基山くんとも戦えるんじゃないかな」

くすりと笑みを零して俺達を覗き込んでくるアフロディ。


思わず、頬が緩む。イナズマジャパンに召集されなかった事は、確かに悔しさがあった(表には出さなかったが)。世界に行く、というチャンスは誰にも魅力的なモノであり、俺も当然その一人である。

隣から、ふ、と同じく口の端を吊り上げた風介が、瞳をぎらぎらさせている。こいつも同じだよな、やっぱり。

そしてそんな俺達の表情を見て、両手で頬杖をついてまたにこりとした表情をこちらに向け、アフロディは言う。

「やる気になってくれたみたいだね」

よかったと椅子から立ち上がる。



「よろしくね、…えっと…」


「南雲晴矢だ」
「涼野風介」



世界に集う者たち


その差し出された細くて綺麗な手を握れば、目の前には無限に広がる世界への可能性の扉。











end









*****

イナイレ3発売三日前!という事で、韓国の3人中心のお話を書いてみました。照美ちゃんにスカウトされたら協力しない訳には行かないと思います。
エイリアはきっと皆で一緒に住んでると信じてます。なんせ財閥ですから。皆同じ屋根の下で、学校も皆で通ってると信じてる。