dolce text | ナノ



お前がただ、隣にいることは



*ダンペラ和解後
















風丸が帰ってきた。いや正確に言えば帰って来たのは富士山の麓に行っていた俺達の方だけど。

俺はあの後、風丸の前で大泣きした。グラウンドで俺の傍にしゃがんだ風丸の細い腰に抱き着いて恥も何もかも捨てて泣いた。風丸が『帰って来た』事がすごく嬉しくて安心と後悔と申し訳ない気持ちで更に声をあげて泣いた。

あんまり俺が泣くもんだからみんな困り果てていたが、それでも涙は止まらない。
風丸も最初は困ったようにしていたが、俺の頭を優しく撫でていてくれた。そしてごめんな、ごめんな、と俺が泣きながら抱き着いてるうちに風丸も泣き出して、お互い肩を抱き合ってずっと泣いた。


風丸の涙が収まっても俺の涙は止まらなかった。それでももう日が暮れ始めて辺りが暗くなり出した。
元々面倒見の良い風丸は俺の荷物を全部まとめ、俺を宥めながら一緒に家に帰った。ずっと手を繋いでくれていたお陰で少し涙が収まってきた。

「ほら、もう泣くな」

赤い目をした風丸がタオルで涙を拭ってくれる。でも今の俺には逆効果で、涙がまたぽろぽろと頬を伝う。
「だって…かぜまるが、うわあああ…」
きっと風丸より赤い目してるんだろう自分は、鳴咽で言葉が途切れ途切れになる。ったくしょうがないなと言いながら優しく微笑む風丸の手をぎゅ、と強く握った。


 家に帰ると母ちゃんがすごく驚いてた。中学生になってから俺の泣き顔なんてそうそう見ないものだったし、一緒の風丸も赤い目をしていたからだ。
でも手を繋いでいたから喧嘩だとは思われず、ごめんね風丸くん、と母ちゃんは何故か謝った。



「じゃあ、俺はこの辺で失礼します」

そう母ちゃんに告げて帰ろうとする風丸の手を俺は離したくなかった。
「円堂、これじゃ帰れないだろ?」
「…やだ、今日は絶対、手離さない。もう今日は離さないって決めたんだ」
結局俺が駄々をこねて三十分程、母ちゃんが泊まっていってと風丸に頼み丸く収まった。
もう小さい頃からお互いの家に泊まり合っている為、電話で母ちゃんがそれを伝えると風丸のおばさんもすんなり了承してくれた。


流石に涙は収まり、夕飯を済ませて風呂も一緒に入って、二人俺のベッドに座って今までの事を話した。風丸が去ったキャラバンがどれだけ寂しかったかとか、その後向かった陽花戸中でどれだけ俺がへこたれたとか、雷門に戻るまでにあったこと全てを伝えた。
対して風丸自身はあまりこの一連の出来事を話したがってなかったから、無理には聞こうとしなかった。

「ごめんな、風丸」

「それに関して、お前が謝る事なんてないだろ」
謝る俺に風丸はいつもの優しい笑顔を向ける。

「俺がサッカー部に誘ったりしなければ、風丸にこんな辛い想いさせなかったのに…」

俯いて、また涙が出そうになった。ふと、目の前の膝に乗った俺の手に、風丸の手が重ねられた。俺の手よりひとまわり小さいのに、とてもあたたかい。

「円堂、それは俺が決めた事だ」

それに、と掠れた声を聞いて顔を上げると、こっちを見て笑いながら、頬に一筋の雫が伝っていた。
「もし俺がサッカーをしてなかったら、苦しみや嬉しさを分かち合えなかった…」
次々と涙が溢れ出るその淡い赤の瞳が、どんな宝石よりどんな自然物より美しく思えて、思わず見とれる。

「…円堂とこんなに距離が縮まらなかった…」


言葉を聞いて、俺もまた涙が1粒、また1粒と落ちる。
風丸を抱きしめて二人で声をあげて泣き腫らした。


もう、離さない。






お前がただ、隣にいることは、


(俺にとって、すごく幸せな事だ)











end









*****

円風大好きだー!!
DE和解後に泣き崩れちゃう円堂はすごくいいと思います。泣き着かれちゃった風丸さんは困りつつ実はすごく嬉しくて、心配かけちゃったなと反省してたり。円堂は円堂で「俺のせいだ…ごめんな」と連呼している。改めてお互い必要不可欠だと思うといいよ。
その日だけは泣き明かして次の日また笑い合おうと二人で決めて、思いっきり泣き明かして翌日目が腫れてるお互いの顔を見て笑っていればいい。幼馴染み最高!( ^ω^ )

今回は円堂を泣かしましたが、風丸さんが泣いててそれを円堂がずっと抱きしめてたりするのもいいなと思います。


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