dolce text | ナノ



闇に呑まれたいとしい君へ



*ダンペラ闇丸さんと円堂くん
















全て終わった、これで地球の命運という重たい荷を降ろしてやっと楽しくサッカーが出来る、という清々しい気持ち、
…だったはずなのに、久々の学校に帰って来るキャラバン内で妙に胸の内がざわついていた。

とても嫌な予感がする。

そう思った事が顔に出たらしく、豪炎寺や鬼道が俺を気遣ってくれた。俺が大丈夫と笑って答えれば二人は「そうか」とそれ以上踏み込んで来る事はなかった。二人に無駄な心配をかけさせたくなかったし、気のせいであって欲しかった。俺の無駄な心配で終わって欲しかった。でも学校に近づけば近づく程、そのざわめきは余計に酷くなる。

その理由が、今やっと分かった。
目の前に黒いマントを被り禍々しい雰囲気を放つ人影を見て、どこか懐かしい感じがした。同時に頭が痛くなる。胸が更にざわつく。
俺はこいつらを知っている。
確信はあった。でも信じたくなかった。夢であって欲しかった。そんな酷い現実なんか受け入れたくなかった。



マントのフードを取って現れたのは、俺の大好きな幼馴染み、風丸だった。

「かぜ…まる……?」

いつも優しく微笑むそいつが俺は大好きだった。俺の隣を歩いてくれる、頼っても嫌な顔せず対応してくれる、世話好きで先輩からも後輩からもよく慕われている、俺の為に大好きな陸上部を休んでまでサッカー部に入ってくれた、そんな風丸が大好きだった。
今目の前にいるそいつは、俺の知ってる風丸じゃなかった。
「やぁ、円堂、久しぶりだな」
いつも上で綺麗に纏められている髪は下ろされ、目にいつもの優しさと真っ直ぐな光はなく、闇に囚われたように暗く悲しい色を宿していた。とても不安定で淋しい目だった。
「風丸…」
風丸に次いで次々とマントのフードを取るそいつらも、やっぱり俺が知っている奴らだった。大好きな仲間だった。一緒にサッカーをやってきたかけがえのない俺の仲間。
「お前ら…どうしたんだよ?」
「これが、お前が力を求めた結果だよ」
大好きな風丸が、俺の今まで一緒にいて聞いた事のない口調でそう告げた。
「力を求めて、ほら」
そう言って服の中から取り出した物は、見覚えのある綺麗な紫色の石だった。
「これさえあれば、俺はお前よりも強くなれる。すごいだろ、円堂」
首に提げたその石は、心を奪われてしまいそうな程妖艶に、頭がおかしくなりそうなくらい綺麗に、光を反射させて輝いていた。


こんなの、違う。

こんなの、サッカーじゃない。

こんなの、お前じゃない。


違う、間違ってる。


俺の中に怒りや後悔や悲しみや淋しさが入り交じり、渦巻く。誰に向ければいいかわからない怒りに、自分が風丸を苦しめていたという後悔に、こんな状況になってしまった悲しみに、俺の大好きな風丸じゃない風丸への淋しさに、胸が押し潰されそうになった。
苦しい。


「ごめんな、風丸」
涙を堪えて笑顔を作った。涙は零れているかもしれない。それでも構わない、命一杯の笑顔を向けて言った。

苦しい思いをさせて、悲しい思いをさせて、悔しい思いをさせて。お前は責任感のあるやつだから、自分を責めたんだろうな。
あの時、キャラバンを去る風丸の気持ちが解らなかった。わからなかったと言うより、理解してなかったんだよな。わからなくて無駄にへこたれて、皆に迷惑かけた。

今なら少しだけ解る。全部はわからなくても、一部だけだけれど、心が痛んで苦しくてどうしようもない事くらい、わかる。


「今、助けるからな」

光を失った目を見据えて、優しく、でも力強く、宣言した。

そのさらさらな髪を指で弄ったり、顔を突き合わせて勉強を教えてくれたり、叱られたり、その細い指と指を絡めてぬくもりを感じたり、いつも隣で笑いあったり、息遣いが感じられるほど近くで眠りについたり、

また、笑いながらサッカーボールを蹴りあったり。
そんな日常を願って、



こんなサッカーに終止符を打つ為に、戦おう。











end









*****

やらかしてしまった、ダンペラ闇丸さんと円堂キャプテン。今更でごめんなさい。
ダンペラ闇丸さんは大好きです。
大好き故に思い入れが強い為、なかなか満足いくような文がかけません。これも満足いくような文じゃないですが、今の私にはこれが限界です。
もっと風丸さんが心を痛めてる描写とか、その痛々しい姿を見て苦しい思いをする円堂とか、風丸さんの復讐的なものとか、書きたい事はいっぱいあるのにうまく文章に出来ません。
ダンペラは奥が深くて、いつまでもかける気がしません\(^o^)/
何せ円風の夫婦喧嘩みたいなものだからね←

「お前に揺るがされる憎悪」の対といったらちょっと違うと思いますが、そう取って頂いても構いません。


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