dolce text | ナノ
募る想いの行き先は
イナズマジャパン代表に選ばれてからというもの、今まで以上に練習に明け暮れる日々を送っている。 合宿所での生活は、朝早くに起床、そして練習、日が暮れるまで時間を忘れてボールを蹴り続けているといつの間にか一日が終わっている、といったパターン化した日常を送っている。練習で疲れた身体は、食欲が満たされると次に睡眠欲が襲ってくる為、ベッドに倒れ込みそのまま眠ってしまう事もしばしばだ。 練習は、毎日が充実していて確実に力がついている事を感じる。それに朝から晩まで大好きなサッカーに明け暮れていられる日々はとても楽しい。
でも…
(最近、綱海さんとあんまり話せてないなぁ…)
よく自分を気にかけてくれ、よく自分の練習に付き合ってくれ、よく自分を可愛がってくれた、あの兄貴肌を持つ懐の大きい先輩に、憧れとも違う恋心を抱いている。 そしてそれは向こうも同じく、想いを抱いてくれている。 イナズマジャパン代表に選ばれて直ぐは、あの人の華麗な必殺技で俺のキーパー技の強化によく付き合ってくれていた。しかし今は練習メニューが違う為、挨拶を交わす事はあっても話す事はなかなか出来ない状態だった。
(今日も壁山くんと、)
新必殺技の完成に意気込む綱海さんは、河川敷のサッカーコートに壁山くんを引っ張り出して練習していた。それをゴール前から眺める俺。
(苦しい、のかな…?)
心臓がきゅうっと締め付けられる音がした。 嫉妬などしていない。 綱海さんを信頼しているし、そもそも嫉妬なんかお門違いである。自分はただ、少しでも長くあなたと一緒に居たいだけ。
なのに、締め付けられる胸はこんなにも痛みを伴っていた。
時間を作るのは単純、夜の自由時間に俺がベッドに倒れ込まなければいい話だ。でも、やはり人間睡眠欲にはどうしても負けてしまうもので、練習の疲れに未だ慣れない俺は、どうしても重い瞼に打ち勝つ事はできない。
(ほんの少しでもいいから、あなたと時間を共有したい…)
「綱海さん…」
結局、その日はもうその事でどうしても練習に身が入らず、練習に付き合ってくれている皆に申し訳ない事をしてしまった。円堂さんに励まされ、鬼道さんにその事を指摘され、変に力んだせいでいつも以上に疲れていた。
そしていつもの様に睡魔に打ち勝つ事は出来ずにベッドに倒れ込んだ。
「…という事なんだが…」 「よし、任せとけ!ありがとな、鬼道」 「あぁ、頼む」
ドアに向かって「立向居、入るぞ」と声をかけても返事が帰って来なかった。そっとドアノブを捻って中を覗くと、既に消灯された真っ暗な部屋で静かに寝息をたてている影を見つける。俺は起こすまいと部屋の電気を付けず、外の光を頼りにする為にドアを開けたまま、ベッドに近づく。 既に夢心地な可愛い寝顔を見て、思わず頬が緩んだ。
(練習、頑張ってんだなぁ…こいつ)
優しく頭を撫でる。いつも頭を撫でるとふにゃりと笑うが、寝ている時なので流石にそれはなく、鬼道から聞いた日中の立向居の気持ちがよく解った気がした。
むにゃむにゃと唇が動く。それは確かに、ある言葉を象っていた。途端、どうしようも止められない愛しさが込み上げてきた。 「…っ勇気、それ反則、」
それは確かに「つなみさん」と言っていた。
引き寄せられるように柔らかい頬に手を添えて、唇にキスをひとつ落とす。
(ごめんな、気づいてやれなくて、)
(なかなか時間作れなくて、)
end
*****
イナズマジャパンで絡みが弱くてむしゃくしゃしてやった。でも最近モブで綱立がまた増えてきたので期待してみます。 壁山とにーにが最近仲いいので、これはたちむが嫉妬してるだろう(笑)と思って書きました。あまりに綱海さん不足で集中力が欠けていればいい。それを察した鬼道さんが綱海に知らせる、という。話聞かされた瞬間、綱海は「何それ可愛いすぎだろ!」と悶々としていればいいですね。 気持ち的に綱海→→←←←立向居くらい。
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