dolce text | ナノ
ここで出会えたから
暮れる秋空の夕日と、グラウンドの土で真っ黒になったグローブ、それから各々部室へと足を運び始めるチームメイト達。だんだんと練習を終え、気付けばグラウンドに残っていたのは自分と、二つ上の先輩だけだった。ピンクに近い綺麗な色のふわふわした髪に、サーファーである証とも言えるゴーグルが、夕焼けに反射していた。
もうそんな時間か、と思いグラウンドを見渡すと、自分と同様に皆が練習を引き上げていた事に今気付いたように後ろを振り返り、同じようにグラウンドを見渡す。
「もうそんな時間か…」
自分が思った事を口にぽつりと出して、ゴール前にいる自分に向き直ったその先輩は続けた。
「どうする?俺らも一応引き上げるか?」
気取らない笑みを向けられ、こちらもそっと微笑んで返す。
「そうですね…今日はグラウンド整備の日ですし、」
整備手伝わなければ、と言う。どちらともなく二人で部室へと足を動かす。
彼はここ最近、自分の練習に付きっきりだ。キャプテンに頼まれた時、快く自分を引き受けてくれた、気前のいい先輩、優しい先輩。
ただ、それだけだった
はず
練習に付き合ってくれた、必殺技ができない自分を励ましてくれた、言葉をかけてくれた、気を使ってくれた、支えてくれた、悩みが吹き飛ぶくらい笑ってくれた、そのひとつひとつが嬉しかった
この感情は、憧れか、好意か、愛情か、
「まぁ必殺技なんて、そんな簡単にはできねーさ」 「焦らねーでやろうぜ」
「今のすげぇ、カッコよかった!!」 「もう一回やってみろよ」
「海の広さに比べたら」 「そんな事気にするもんじゃねーよ、な」
確信が芽生えたこころの核心をつく
「おーい、立向居」
名前を呼ばれて、気付けば顔が目の前にあって自分を覗き込んでいた。
「…は、はい!」 「ぼーっとしてるけど大丈夫か?」
ふわふわの髪が微かに吹き抜けたに揺られて、
「はい、大丈夫です。ただ、」
夕焼けと混じって、ピンクの髪はまるでハチミツのようで、
「ただ?」
夕日がすごく似合う人だなんて思った。海もあったらそれこそ日焼けした肌と、ボードと、夕日とで、絵になるくらい似合うと思った。
「オレ、このチームに来てよかったなって、改めて思って…」
(あなたに、綱海さんに、出会えたから)
end
*****
初綱立でした。アニメ59話が衝撃的すぎて半ば勢いで書き上げたようなものです← 学級閉鎖のおかげで書けたと言っても過言ではありません。 一応ぼんやり設定説明。 ムゲン・ザ・ハンド練習中で、まだ二人は恋人っぽくないけれど、お互いなんとなく想い合ってる。そんな状況で、優しいつなみんせんぱいに憧れとはまた違う想いを寄せていると自覚した…みたいなイメージです。
綱海は青空と太陽も、夕焼けも、海があればどっちも似合う人だと思います。
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