dolce text | ナノ
きっと、冬が近いせい
茶会記念文 / 参加者様へ
*緑川が女の子→名前はリュウ
ひらり、秋風が微かに私の横をすり抜ける。セーターを着込んだセーラー服は、秋風の寒さをも通して私の身体を冷やしていく。 思わずぶるりと肩が震えて、もうすぐ来る冬の寒さをしみじみと感じた。そろそろ紺のコートを出さなくちゃ、そう思いながら彼との待ち合わせの校門前へと歩みを進めていった。
校門を出てすぐの左側、彼は既にいた。
「ごめん、待った?」 「大丈夫、俺も今来た所、」
行こうか、とそっと差し出された手をそっと握れば、指先が既に氷のように冷たくなっていた。 嘘。今来た所だなんて、私を気遣っての嘘だってわかってるけど、何故か少し、切なくなった。 確かにもともとヒロトは指先の温度が低いけれど、これは間違いなく秋風に犯された冷たさ。そんな彼の冷たい指先に自分のまだ生温い体温を分け与える様に、指と指とを絡ませた。
アスファルトに横たわった木の葉を踏めば、パリッと渇いた音を立てる。春は桜の花びらの雨を降らせるここの通りは、冬に近づくこの季節になると木の葉が落葉へと姿を変えていく。妙に寒々しいこの風景も、毎日の通学ですっかり見慣れてしまった。 校門から繋いでここまで歩いてきたヒロトの左手は、私の右手の熱で少し温かさを取り戻していた。
「リュウの手って、暖かいんだね」 「ヒロトが冷たいだけでしょ?」
まだ嘘をついたことを少し根に持っていた私が嫌味っぽく言えば、ヒロトはふふっと口端を吊り上げる。
「怒ってるの?俺が嘘ついた事」
見透かしたように緑の視線をこちらに向けて、繋がった右手がきゅっと力を込めて握られた。思わずその優しい瞳から視線を逸らす。 繋がっていた手がそっと離され、冷たい空気に晒されていた私の頬を冷たい右手となまぬるい左手で優しく包み込んで、彼は寂しそうな眼差しを私に向ける。
「俺は冷たくても寒くても大丈夫だよ」 「大丈夫なわけないでしょ…!」
「だって、リュウが暖めてくれるんでしょ?」
その彼の呟いた声を耳許で聞いたと脳が理解した瞬間、唇に何かあたたかくてやわらかいものが、触れ、た。 ちゅうっとリップ音を立てて触れただけのそれがすぐに離される。キス、された。 離れて外気に触れた唇の表面がじんじんとして、人差し指でそっと触れてみれば、そこは表面だけ熱を帯びていた。
「ねぇ、リュウ、」
先程まで秋風に曝されて冷たかった頬は、彼のおかげで自分でも分かるくらい、すっかり羞恥の熱で火照っていた。
「唇が触れただけでこんなに暖かくなるなら、全身を重ねたらどれだけあたたまるんだろうね、」
きっと、冬が近いせい
人肌恋しくなっちゃうのは、仕方ないでしょ? そう耳許で色っぽく囁くヒロトにほだされて、そのまま手を引かれて帰路を急ぎ足で駆ける。
end
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どうしてこうなった!! この後はもちろん家に帰って…です← あきちゃん宅「Weiss?」にて行われた茶会参加者のみお持ち帰りはフリーです^^ 楽しい時をありがとうございました。当初の予定(パンチラ基緑)とは大きく逸れてしまいましたが、こんなんでよろしかったらもらってやってくださいませ。
茶会参加者さまのみお持ち帰り可。
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