dolce text | ナノ



君が愛しいが故

60000Hit記念&more / きおり様へ



ふと快晴の空を見上げれば、地上に差し込む陽射しに思わず目を細めてしまうくらい眩しい太陽。
そんな絶好のサッカー日和に、俺と俺の隣を歩くヒロトは私服。今日は練習がオフで、ヒロトに頼まれて買い物の付き添いをしていた。

買う物一覧が記されているメモを片手に「こんなもんかな…」と呟くと、ヒロトはこちらに柔らかく微笑んだ表情を向ける。

「買い物は終わったし…ねぇ緑川、」
「ん、なに?」

「これからデートしようか」

満面の笑みと共に緩く引っ張られる右手。そのまま歩き出すヒロトに、「ここ街中だよ!」と抗議しながらも手を引かれるが儘についていく。
手繋ぐくらい大丈夫だよとにこやかに言うが、全くと言って大丈夫じゃない。周囲の目というのは勿論だが、何よりも自分の心の準備が、という問題だ。
思わずじと、と汗がうっすらと滲む彼と重ね合わせた掌。ふっと微笑んだ彼は、体温が低い白い肌の指を俺の指に絡ませて、きゅっと握った。

そんな彼の足が向かった先は、専門店が並ぶ近くのショッピングモールだった。
休日である為に家族連れなどでそれなりに混み合っていた。そういう意味では、手を繋いでいたのは正解だったみたい。
恥ずかしいけれど。



それは、いくつかの気になる専門店を回って、ある雑貨屋の前を通った時。
ふと目にしたある物が気になった俺は、その雑貨屋へと足を向ける。繋いだままの手を今度は俺が引っ張る形になり、彼は何も言わずについてくる。


棚に、銀色のシンプルなデザインのネックレスがひとつ。
それにはアルファベットの飾りがついているだけで、上から照らされている照明を浴びてひっそりと輝いていた。
「緑川、これ欲しいの…?」
俺が視線を落とす物を後ろから覗き見たヒロトは尋ねてくる。
「別に…ただ気になっただけで…」

そう答えながら、俺は棚に並べてあるうちの『H』のネックレスを手に取る。

「ヒロトはこれだな、」
「じゃあ、緑川はこれだね」
と、繋いでいない方の手を棚に伸ばして『R』のアルファベットのネックレスをこちらに見せてヒロトは言った。


「でも、ネックレスってサッカーやるとき邪魔だな…」

確か豪炎寺は妹に貰ったというネックレスをつけてたけど、俺はネックレスが肌に触れてるのは擽ったそうで嫌だった。お揃いで買ったら面白そうだったのに。

残念だと諦め、他行こうとヒロトに声をかけると、何やら店内を見回していたヒロトは繋いでいた手をそっと離し、隅のほうにあるベンチで座って待っていて欲しいと言う。
よくわからないが承諾の返事をしてお店を出て、近くの空いているベンチに腰を下ろした。



少しして、先程の店から出てこちらに向かってくるヒロトの姿。

「お待たせ」
「何買ってきたの?」
「…ん、これ」

そう言って手渡された、綺麗に包装された小包。

「緑川にあげる」
「……え…?」
「いいから、開けてみてよ」

微笑むヒロトの行動に驚きつつ、言われるが儘にそれを破かないように丁寧に開けて、中に入っていたものは、


「ストラップ…?」

先程のネックレスに似た、銀色のシンプルなデザインのストラップがひとつ。そこにはアルファベットの『H』の飾りがついている。

「なんで…?」
「ネックレスは邪魔だけど、ストラップなら携帯につけられるかと思って…嫌だった?」

ちょうどそのネックレスが置いてあった隣の棚にストラップがあったから買ってきたと述べるヒロトは、俺の隣に座ってそう尋ねる。

「あ、いや、そうじゃなくて…それはすごく嬉しいんだけど…」
「そう、よかった」
「なんで俺『H』なの?」
「あぁ、それは、」

と、ヒロトはバッグからラッピングを施されていないもうひとつの袋を取り出して、それをこちらに見せながら答える。
ヒロトの掌に乗るストラップのアルファベットは『R』。

「お互いのアルファベットにしてみたんだ」

ふっと余裕そうに頬を緩ませたヒロトが急に耳許に近づいてきて、「お互いの所有印みたいでしょ?」と囁いてくるものだから、人通りの少ない隅のベンチとはいえ恥ずかしくてたまらず、思わず赤らめた顔。


「…ばか…!」

嬉しくて、でもすごく恥ずかしくて、混乱した俺は熱に犯された頬を隠すかのように、ぎゅううっと思いきりヒロトに抱きついた。




君が愛しいが故


君は自覚ないんだろうけど、周囲からたくさんの熱い視線を集めてるんだから。所有印はせめてもの防衛だよ。
…なんて、そんな事純粋な君の前では決して口には出さないけれど。











end










*****

6万打突破されましたきおりに捧げます!

某方とショッピング行った際にアルファベットのネックレスを見つけて、これ基緑がお互いにつけてたら可愛いよね、という安易な妄想から生まれたネタでした。でも、サッカーにネックレス邪魔だしそもそも彼らは男子同士だからそんな女々しい事しないよなー…なんて思ってストラップに至った訳です。以上言い訳という名の設定説明でした。

一方的にこんなの押し付けてごめんなさい…!!気に入らない点など言ってくれれば全力で書き直すよ(`・ω・´)
そしてこれは、合格祝いも兼ねてたりするんですよ…ぼそり。
いつもいつも、こんな私に仲良くして下さる照美様なきおりにマジで感謝です!大好きだy(ry
これからもサイト運営などなど頑張ってね!気持ち悪いくらいstkしてまs

本当におめでとうございました!


きおり様本人のみお持ち帰り可。


menu