dolce text | ナノ
言葉にしなきゃわからない
*後半基緑
わからない、なんてことわかってる、 言葉にしなきゃ伝わらない、なんて。
人間の一番重要な体液に酷似したその鮮やかな髪の赤も、光を失いかけていてそれでも残り少ない光をめいいっぱいぎらぎらさせるその瞳の深い翠も、俺を突き刺さんばかりに鋭くそして酷く優しいその声音も、俺を魅了するには十分過ぎる色だった。
恐い、 それでいて、きれい。
綺麗で美しい、繊細。 なのに、混濁としていて醜い、殺伐。
無意識下で恐怖と同時に憧れとは違う好意を抱いた。 鋭く俺を見下すその視線が嫌ではなかった。むしろ心地がよいくらい。 冷たく放たれるその言葉が嫌いではなかった。むしろ酷く優しいくらい。
「ご苦労、『レーゼ』」
高い位置にある椅子に腰掛けて頬杖をついたグランは静かに目を細める。
「次の指示があるまで自室で待機ね」 「はい、グラン様」
頭を下げて膝をついて、痛いほど感じるその視線こそが俺が此処にいられる理由。
自覚したのは、最近。
視線が自然に引き寄せられるその人は何故かいつも、俺の目には何となく淋しそうに映った。でも淋しいかなんて畏れ多くて問うことなどできやしない。聞いてはいけない。 思えば思うほど、憧れとは違う好意はどんどん胸の内で膨らんで、それはまるで空気を限界まで入れた風船のようだった。 その溢れんばかりの想いを抱いて、今日もあなたの前に跪ずいて頭を下げる。 俺はセカンドランクであの人はジェネシスだから。
眺めているだけじゃこの想いは伝わらない。それくらい解っている。だから眺めるだけ。 答えを知るのが怖い、だけれど伝えたい、少しでも近づきたい。でも伝えられない。否、それを言葉にしてはいけない。自分の感情に鍵をかけて押さえ込んで、ただ眺めているだけ。それでいいと自分に言い聞かせて。
気付けば、目の前に穏やかな翠の瞳がそこにあった。
「あ、起きた?」
そう問われて初めて自分が寝ていた事に気付いた。顔を起こしてまだ眠い目を擦れば、そこにはいつもの緩く立ち上げた髪の赤も鋭い瞳の翠も冷たい声色もなく、そのかわり優しく微笑んだ顔があった。
「……グラン…さま?」
そう呟くと驚いたように目を丸くして、それからふふ、と小さく笑われた。
「寝ぼけてる?」
柔らかい表情をこんなに近くで見れるだなんて、誰が念っただろう。微笑みを向けられる、傍にいられる、だなんて、望んでも到底無理な願いだと思っていた。
「うん…寝ぼけてたみたい…」
でも今はこんなにも近い。
せっかく寝ている時にキスしようとしたのになぁ、と呟くヒロトの言葉に頬の熱が急上昇する。
「もう、なんでそういう…!」
伏し目になってわざと外方を向く。
「寝顔って、罪だよなぁ」
そう言って熱を含んだ頬を両手で包まれ、無理矢理顔をヒロトの方に向けられる。
「まぁ寝顔じゃなくても罪だけど」
頬を包んだ両手から逃れる事ができない状況では目で訴えるしかできず、そのまま目の前で微笑むヒロトを睨みつける。 でもそんな行動が余計ヒロトにからかわれる要因になる事もわかっている。そんな俺からの視線を浴びて、口を歪ませて言う。
言葉にしなきゃ、わからないよ?
解ってるくせに、と心の中で毒づきつつも、その微笑みが自分に向けられたものだという幸せを改めて実感して、小さく唇を動かした。
end
*****
リュウジの寝顔にちゅーして欲しい、ヒロトに!!← エイリア時代はレーゼ→→→←グランくらいだとそれはそれでおいしい。リュウジとヒロトだと、ヒロトがうざったいくらいリュウジ好きで、リュウジは恥ずかしがってるのがいい。そう思って書いたらこんな文になった… まぁどういう形であれ、二人が絡んでいればいいことに変わりはないです←
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