dolce text | ナノ
それは君が為
*グラレゼなのにレーゼ登場しない
「…今、なんと…」
膝をついて驚いたようにそう聞き返す彼に俺は再び同じ言葉を降らせる。
「負けたら追放、って言ったんだけど聞き取れなかった?」
弱者はエイリアに要らないよ、と彼を鋭く見下ろせばこちらを見あげていた顔がびく、と反応して恐怖の色を濃くした。
「…しかし、いくらなんでも…」 「俺に口答えする気?」
鋭い目線に加えて突き刺す様に鋭くそう放てば、彼はもう頭を垂らすしかなかった。
「…承知、致しました」
失礼しました、そう言って俺達の部屋から出て行った彼の背中を眺めながら、心でそっと言い聞かせる。
(これで、いいんだ)
負けたら追放。
先程の彼、ファーストランクチームイプシロンのキャプテン、デザームにした命令。これはセカンドランクチームであるレーゼ率いるジェミニストームが雷門中に負けた場合の措置だ。
(あんなに無邪気だった彼が、)
遠い日の靄がかかった記憶を頭の片隅から引っ張り出して、かつての明るい彼を思い出す。
(笑わなくなってしまった、なんて)
こうなってしまったのはあの計画のせい。でも俺達は父さんにここまで育ててもらった恩がある。だから彼もこの計画に加担している。 そのサッカー技術を評価されてセカンドランクのキャプテンに選ばれたレーゼは、向きもしない作った性格を無理矢理演じている。チームランクが上の俺達に怯えながら、計画の為に、父さんの為に、そして自分の居場所を守る為に必死になっている。かつての明るい笑顔を捨てて、名前を捨てて。
(こんな辛い思いをするのは、俺だけで十分だ)
追放してしまえば、この計画とはもう無関係になる。だから、追放を命じた。
(元の関係に戻れないかもしれないけど、)
雷門中はどんどん力をつけていて、そのうち俺達ガイアに追い付くなんて事がそう遠くない未来にあるだろう。 追放、それは下手すれば一生会えない事の可能性を持っている。だからこそ、彼をこの計画から遠ざけ、俺は父さんの為に、自分の為に、グランを演じて続けるのだ。
(怨まれてもいい、嫌われてもいい)
(ただ苦しむお前を見たくないだけ)
「そうでしょ、リュウジ…」
久々に口にした彼の名前は、何故か渇いてしまっているように感じられた。
end
*****
デザーム様がジェミニを追放したのは、グランがレーゼを想うからこそに命令を下して逃がした、という経緯だったらいい。昔は絶えなかったリュウジの笑顔が見れずに切なくなってるグランの話でした。何だかヒロトとグラン混じってますね…。 初グラレゼお粗末様でした。
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