dolce text | ナノ



これもきっと星の運命



*76話回想の部分の話
















エイリアの脅威に関して、全てに終止符が打たれてからしばらく経ち、騒ぎも落ち着いてみんな平穏に日常を過ごしていた。
宇宙人だからと今まで父さんの計画の為にやっていたサッカーが、いつの間にか俺たちにとって大好きなスポーツへ変わっていた。だから俺だけでなくみんな、計画が終わってからも毎日ボールを蹴ってサッカーを楽しんでいた。

今日はくじ引きで決めたチームに分かれて練習試合を楽しんでいる。
ひと試合終えた俺はベンチに座り、肌の表面を湿らす汗を拭いながら二試合目が行われているサッカーコートを眺めていた。
すると、さっき相手として戦っていたチームの緑川が来て、隣に座っていいか尋ねられる。もちろん、と了承すれば水分補給用のボトルを持ったまま隣に座った。


ヒロト、俺、孤児でよかった、

突然、緑川はとても楽しそうに笑ってそう呟いた。

俺たちは本当の親の顔を知らない。名前を知らない。腹を痛めて産んだ子を手放す親なんて知らない。そして知りたくもない。
俺たちには育ててくれた大切な父さんがいるだけで十分だった。緑川はどう思っているかわからないけれど、俺は少なくともそう思っている。


どうしてそう思うかと尋ねれば、緑川はまた楽しそうに笑って答える。
こんなに楽しいサッカーが出来るし、こんなに楽しい『かぞく』に会えたし、でも一番はやっぱり…
そして途中口篭った。優しい風が吹いて、長くて少し癖のある緑色の髪が靡く。
その続きを催促すれば、ほんのり顔を赤く染めて伏し目がちにこちらを向いて言う。

ヒロトに、…会えたから、

小さくそう言う緑川の声は微かに吹く風に混じって、でも俺にはしっかりと聞き取れた。そんな緑川に微笑んで俺も呟く。


俺も、孤児でよかった、

父さんや瞳子姉さん、おひさま園の皆と出会えたし、サッカーにも出会えた。サッカーを通じてたくさんの人と出会えた。
今、こうやって笑い合える君が隣にいるのも、俺がそういう星の元に生まれたからなんだ。


ぴーっと高いホイッスルの鳴る音がコートから聞こえてきた。試合終了の合図だ。次が試合の番だった俺はそっとベンチを立った。

「頑張って、ヒロト」

去り際に背中にかけられた言葉は、何よりも元気が出た。


(じゃあまずは、流星ブレードで1点)











end









*****

「運命」は「さだめ」の当て字です。
要は孤児じゃなかったらサッカーやってないかもしれないし、もしやっていたとしてもこんな楽しい仲間や家族(おひさま園は家族だと思っております)とは出会えなかった、というお話でした。
76話で元エイリアのみんなが仲良く楽しそうにサッカーやってるのを見て感動しました。本当に良かった…!



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