dolce text | ナノ



視界に入る水玉

企画提出



*緑川が女の子→名前はリュウ

















萌黄の綺麗な髪に太陽の光を浴びながら、少し高い位置にひとつに纏めているそれを揺らして彼女は俺の数歩前を歩く。
「歩く」といっても、こちらを振り返りながら後ろ向きで歩いたり、時々空をぼーっと眺めながら前も向かずに歩いていたり、興味がある方へときょろきょろ頭を動かしながらだったりで、危なっかしい事この上ない。

昔から健気で明るくて元気な彼女の取り柄と言ってしまえばそれまでかもしれないが、過ぎるのも多少問題だと俺は思う。



「リュウは昔っから危なっかしいんだから…」

そう言って数歩先の彼女に早足で追いつき手を取ろうとしたが、その俺の右手は掴むものもなく空を切る。

「ヒロト、私はもう子供じゃない!」

くるりと振り返ったリュウはそういうと両手を腰に当てて、まるで子どもを宥めるような口調でそう言ってきた。まぁ、怒った顔も可愛くて、俺は欠片も痛くないけれど。

「でも前を向いてないだろ」
「だって前見ててもつまんないし…」
「そうやって、いつも転んで怪我して帰ってくるのは誰だい?」
「…だからって、……て、手繋ぐ事ないじゃん!」

俺に注意された事を少々気にしたらしい彼女は、大人しく俺の隣を歩きながら俯き加減でそう呟いた。
そんな少し落ち込んだような表情のリュウもやっぱり可愛い。



そんな俺たちは、今は学校から家へ帰る帰路である訳で、要するに制服である訳で、普段私服では自ら好んで短いスカートなどあまり穿かないリュウも、プリーツのついたチェックが基調のスカートを穿いている訳で。
丈が長いとはいえないスカートで走って転んでもしたら…、なんて考えると居ても立っても居られない。

これでも一応恋人であるのだから。


「そんなに照れなくても、いつも繋いでたじゃないか」
「て、照れてない!だいたいそれはお日さま園の頃でしょ!」


幼い頃からお日さま園で育った俺達は、兄妹のように育てられた所謂幼馴染みという関係にある。

彼女への恋心を意識したのはいつのことだっただろうかと思うくらい、知らず知らずのうちに、俺の心は惹かれていっていた。まだ『恋』と呼ぶには幼く、淡く、儚いものではあった。では、だったら一体何という言葉で表せばいいのかと問われれば、その感情は思えば紛れもなく『恋』であった。

自分は彼女の傍らに居られれば、恋人同士にならなくてもそれでいいと思っていたのだが、無意識であろう上目遣いではにかみながら「好き」だなんて言われてしまえば、それに抗う事なんで出来やしない。

リュウお得意の諺で言えば『据え膳食わぬは男の恥』というところだろう。


「とにかく、また膝にすり傷は作って欲しくないんだ。…それとも、転んで俺におぶられて帰る?」

隣の彼女にそう囁いて微笑みかければこちらに見上げられた視線が揺らぎ、頬がほんのりと桃色に染まっていくのが見受けられる。
ひとつひとつに健気に反応を示すそんな彼女もやっぱり可愛い、なんて口を綻ばせていたら、恥ずかしさに耐えかねたらしく彼女は突然走り出して。


数歩先で勢い余った彼女の足が縺れ、リュウは盛大にコンクリートの上に、

転んだ。


その反動で捲れたプリーツスカートから少しだけ覗く、白いそれに目が行かない訳がなくて。




視界に入る水玉



「水玉……」

「っ…見ないでよ…!!」


慌てて起き上がり、捲れたスカートを直そうとするリュウがやっぱり可愛いと思いつつ、彼女の制服についた汚れを優しく払って落とす。
通学路が大通りでなくて本当に良かったと思ったのは、彼女のパンツを公衆の面前に曝け出さなくて済んだから。

「怪我してない?」
「……だいじょうぶ、」
「全く…言ったそばから転んで…」


結局手を繋いで帰ることになった時の珍しくしおらしいリュウが見られたのは、恋人である俺だけの特権。



(ついでに、彼女のパンツを見れる特権も俺だけのもの)

(こんな事なら、もっと可愛いぱんつ穿いてればよかった…)











end









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パンチラリズム様に提出しました
パンチラの企画なのにも係わらずパンチラが少なくてすみません…。好き勝手に書きすぎたせいで基山が可愛いしか言ってない気がします。
参加させて頂きありがとうございました。


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