dolce text | ナノ
頼れる先輩ができました
イナズマジャパンの一員になってから随分と人の輪が広がった。特に大半のイナズマジャパンメンバーを占める、以前レーゼだった頃に敵対した雷門中の人たちは、あんな酷い事をした俺を受け入れてくれた。正直不安だったが、それも今や杞憂だったと笑って過ごせる。 特に、いろいろと俺を気にかけてくれるのが風丸だった。
「隣、いいか?」
練習を終えて食堂で夕食を食べる時、そう声をかけられた。口の中の物を飲み込みどうぞと返事をする。 「最近、緑川頑張ってるよな」 「…うん」
「でも成果が出なくて悩んでる」
そうじゃないか、と尋ねてきた風丸は、どうやら練習を人一倍頑張っても成果が表れず伸び悩む俺を気にかけてくれている様だった。聞かれた事は図星で言葉に詰まってしまう。 「…皆はどんどん力をつけて、俺だけ置いてかれる、そう思い詰めてるだろ、緑川」 「風丸は必殺技がふたつも完成して、絶好調だよね…」 思わず口から厭味が零れてしまう。風丸に当たったってどうにもならない事だと言うのに。風丸は何も悪くないし、それ以前に俺を気にかけて言葉をかけてくれているというのに。言葉は放った後に後悔しても取り消せない、悪いことを言ってしまったと思う。 それでも風丸は怒らず、むしろ少し微笑んでいた。
「少しつまらない話になるが、聞いてくれないか?」
風丸はまだエイリア学園が脅威を奮っていた時、今の俺みたいにいくら特訓を重ねても伸び悩む時期があったらしい。ヒロトたちジェネシスと戦ってその強さに絶望し一度サッカーから離れて、力を求めたあまりに道を踏み外した、と。 「今考えれば、あの時の俺は気が狂ったように力を求めてた」 今は後悔ばかりだ、と少し淋しそうに物語った。 「サッカーを楽しむ事を忘れてたんだ…」 そしてまたそれに気付かせてくれたのがキャプテンの円堂だった、という事だ。 「お前には、俺みたいに力を求めて道を誤るなんて事、して欲しくないんだ。そこに残るのは、後悔だけだから」 真剣な面持ちで語る風丸は、またこちらに顔を向けて問いた。
「緑川、サッカー楽しいか?」
真っ直ぐとその目で見据えられて、思わず言葉が出なかった。そう言われると、最近強くならなきゃという一心で練習をしていた。力をつけなきゃと自分を追い込んでいた。楽しむ事を忘れていた。
思い詰めた表情をしていたらしく、そんな俺を見てふ、と笑う。
「まぁ、ほどほどにな」 息抜きも大切だぞ、と言って食器を持って立ち上がり言ってしまった。 その背中は、何故かとても大きく見えた。
次、風丸に聞かれた時は「サッカー、楽しんでるよ」と笑顔で答えられるようにしたい。
(ありがとう、風丸)
end
*****
題名が難産でした。毎度ながらセンス皆無ですみません。 風丸さんは二期の経験を生かしてリュウジにアドバイスすればいいです。そして息抜きが78話の私服デートに繋がリーヨしてたりしてなかったり。こんな感じで仲良くなリーヨ!
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