dolce blog | ナノ

基緑文 / text
2011/01/23 21:53

昨日の茶会にて派生した妄想を膨らませてささっと書いてみました。公式が下さった少ない要素を使わないと損ですよね!

115話ネタバレ要素がありますので、ご注意下さい。





準決勝が終わって半刻が過ぎようとしていた時、携帯がバイブレーションで着信を知らせた。携帯を開いて表示されていたのは、予想通りの名前。
真ん中のボタンを押してそっと耳を当てる。

『もしもし、緑川…』
「…ヒロト」

右耳の鼓膜を震わせるその声は毎日聞いているのと変わらない、落ち着いた優しい声。大好きな声。

『見てくれてた?』
「当たり前じゃん、…おめでとう…」
『うん、ありがとう』
「次はいよいよ、決勝だよね。『勝って兜の緒を締めよ』ってね!」
『相変わらず、諺好きだね』

くすくすと電話越しに聞こえる彼の微笑に、見えないけれど口を尖らせて文句を零す。

「ヒロトだって…今日試合中に言ってただろ!」
『緑川風にってやつかい?』
「もう…恥ずかしいから止めろよな…」
『止めろって言われてもなぁ』

姿は見えなくても、何となく分かるのだ。だから多分、ヒロトは余裕そうににこりと笑みを浮かべて、さらりと恥ずかしい事を言ってのけるのだ。

『俺は諺が好きなんじゃなくて、緑川が好きだから言ってるんだよ』


テレビで見た遠い島で頑張る彼の活躍の姿に、かっこいいと思わず胸が高鳴ってしまった後直ぐにこんな事を言われて。
嬉しさと羞恥がまぜこぜになった脳は混乱して、何も言えなかった。

『…緑川?』
「……ばか、恥ずかしいよ!」


試合中の彼がかっこよかったなんて、誰が言ってやるものか!これ以上は恥ずかし過ぎて俺の身が持たない。





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