「早めのクリスマスでも祝おうか」
照美くんが金曜日の帰り道にそう提案したので、わたしはさっそく土曜日にプレゼントを買いに行った。照美くんは何が欲しいかなあ、何が似合うかなあ。そもそもこんな庶民のスーパーなんかで買っていいんだろうかと思ってお母さんに電話したら、 『じゃあ作れば?』 とさらりと言われたので、毛糸玉をいくつか買ってぶなんにマフラーを編むことにした。意外とあみものは得意なので、日曜日の朝には完成して、そのまま照美くんのお家に渡しに行った。上がっていく?と聞かれたので素直にそうさせてもらった。照美くんはわたしの作ったマフラーをすごく気に入ったみたいで、何度もありがとうと言ってくれた。 「じゃあこれ僕からね」 手のひらに乗せられたのは小さな白い箱で、わたしがおどおどしながら開けてみるとまさかの予想的中で、銀色に輝く指輪があった。たいへんびっくりした。
「左手だして」
言われるがままに左手をさしだすと、照美くんはそれを支えて薬指に指輪をはめて、 「まだ予約の予約だから」 とつぶやいた。 「こんなにきれいなのに」 と返したら、 「僕はまだ納得していないんだ」 なんて、すこしほっぺたを赤くして言うので、たまらなくなって抱きついた。シルバーリングを作れるだけでもすごいと思うんだけどなあ。 「高校を卒業したら、ね、もっとちゃんとしたの作って、渡して、プロポーズするよ」 「うん」 「返事はひとつしか受け付けないからね」 「ひとつしかしらないよ、わたし」 「……リサさん、すきだよ」 やっぱりわたしは世界一しあわせなんだと思った。あと6日。