12月14日、今日から2週間後、わたしはお母さんといっしょにここ、稲妻町をたつ。転校の手続きはもう済ませたらしい。ただ高校もあっちのに行かなくちゃならないので、赤本は解き直しだ。環境にはたぶんすぐには慣れられない。それでももう、時間がない。
「これ面白いよ」
と照美くんが貸してくれた分厚い本のページをぱらりとめくった。女の子が異世界を旅するファンタジーだった。照美くんがこういうのを読むイメージはあんまりなかったので、なんだか新鮮な気持ちで、わたしは読みすすめた。だけど読むスピードが遅いからまだまだ先はながくって、2週間以内に照美くんに返せるかわからない。次の日に相談したら、向こうに持って行っていいよということだった。照美くんとばいばいするまで、あと13日。