「そういえばリサさん、宿題おわった?」

大好物のチーズケーキを頬張っているとき、照美くんが唐突にそう言ったので、わたしは豪快にむせかえってしまった。しゅ、しゅく、しゅくだい、だと……! そんなものアウトオブ脳内だった。やってない、というかまず課題プリントやら問題冊子やらをどこにおいたかすらわからない。

「げっほげほげほ、っうへええ」
「……だいじょうぶ?」

心なしか、照美くんの声が若干引いてる気がする。い、いかん、このままではわたしの女子度が大暴落してしまう!なんだこいつげひんだなって思われてしまう!それだけは避けたい!いちおう女の子として避けたい!

「う、え、えっと、うーん、手はつけてみたんだけど、わからない問題が多すぎて、もうなにがわからないのかもわからないというか、なんというか」
「……とか言って、問題集開いたこともなかったりして」
「ええっ!?なんでわか……、い、いや、し、しっけいな!わたしだって、ちょっとはがんばってみたりしたんだよ照美くん!」
「ふーん、本当かな?……まあいいけど、わからないなら僕が教えてあげようか」
「えっ、ほんとに!?」

それは助かる!照美くんの通う世宇子中は賢い子ばかりだし、なかでも照美くんはトップクラスの秀才なのだ。夏休みまえの期末テストの点数なんかわたしの倍はあっ……いや、このはなしはわたしのプライドにかかわるので言わないことにしよう。 とにかく、ええと、あれだ。夏休みも中盤にさしかかり、照美くんの提案で、打倒宿題勉強会をすることになった。親御さんがふたりとも夜中遅くまで帰ってこないからということで、場所はなんと照美くんのおうち。初!訪!問!イエー!!とわたしはいまからテンションマックスなのですが、照美くんがぽつりと 「僕たちすごく見られてるよ」 とえがおでおっしゃったのでここがファミレスだったということを思い出しました。はしゃぎすぎましたすいません。

「えっと、じゃあわたしお菓子いっぱい持っていくね!」
「それはいいけど、ちゃんと勉強するんだよ?」
「わかってるよ、もちろん。でもほら、ごほうびがあったほうがやる気出るじゃない!1問正解のたびに1粒みたいな」
「ああ、なるほど」
「あっ照美くん、きのこかたけのこどっち派?」
「……キノコ類はあんまりすきじゃないけど」
「え、やだなあ照美くん、きのこはチョコレートだよ?」
「チョコレート?」
「あれ?知らないの?……まあいいや、じゃあたけのこにしとく!」
「……いまの時期のたけのこって美味しいの?」
「えっ?……いや……年中美味しいんだけど……」
「そうなの?」
「えっと……うん、まあ」

な、なんだか照美くんとうまくキャッチボールができてないぞ!照美くんが投げ返してくれないぞ! にしても、かの有名なきのことたけのこを知らないだなんて。まあでも照美くんてあんまりああいうお菓子とか買わなさそうだし、知らなくてもべつに不思議じゃない。

「それじゃ、いつにする?早い方がいいよね、終わらないと困るし」
「う、うん!わたしはいつでもひまだから、照美くんがいける日でいいよ」
「じゃあ明日」
「……あ、あした!?」
「うん、明日。だめ?」
「だ、だめじゃないけど」

び、びっくりした!まままさか明日とは……!せめて明後日とか、ああああ、心の準備が……!!だ、だって、照美くんのおうちに行くんだよ、おうちに。照美くんが毎日起きて朝ごはんたべて学校行って帰ってきて晩ごはんたべてくつろいでテレビみてお風呂はいってはみがきしてふとんでねむってる、おうちに、行くんだよ。考えただけでもどっきんばっこん、心臓が勢いよく脈をうつ。

「何時にしようか」
「お、起きれるかなあ」
「起こしてあげる」
「ど、どうやって?」
「モーニングコール」
「……あ、ああ、でんわか」
「じゃあ10時くらいに迎えにいくね」
「う、うん!」

……そんなこんなで、照美くんのおうちに宿題をしにいくことになりました。





10:/キャラメルとブラウニー






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