体育の時間から耳鳴りがやまないまま、放課後。
今日も帰りに南雲とわたしんちに直行、と思いきや、とうの南雲がアイス食べたい、と言い出して、近くのコンビニへ。お互い好きなアイスを買って、この前行った公園へ。

「マジ暑いって最近」

ぐったり、南雲がもたれるベンチは、この前とおなじベンチ。いやでもあの時のことを思い出してしまう。

…ほんとのところ、言い方とか、表情とかで、冗談じゃないことはすぐにわかってしまっていた。ただ、そう受け取りたくないだけだった。南雲を男の子として見てしまったら、わたしは。
冗談だったら絶交しないから大丈夫と言ったときの南雲の笑顔。偽物だと見抜けるのは本当の友達の証。そう、『友達』の。

「ねぇ、南雲」
「んー…なに」

だるそうな南雲は自分の髪をくるくるといじりながら、首だけわたしの方に向ける。その仕草があまりにも、なんというか、いろっぽく見えてしまって。飛び跳ねた心臓がうるさい。わたしを困らせるのはやめてほしい。

「あのさ、もし、南雲を好きだって思ってる女の子がいたら、…どうする?」

南雲の大きい目がわたしを見据える。なんらかの返答があるだろうと思って黙ったまま待っていたけど、いつまでたっても何も言ってくれない。しびれをきらしたわたしは彼の名を呼んだ。「南雲?」
南雲はまだすこし考えるように時間をおいてから、いつもよりだいぶトーンの低い声で、言った。

「それがおまえじゃないなら、お断りだね」
「…なにそれ」

南雲はふんと鼻を鳴らし、そっぽを向いてしまう。キリキリと痛む胃と耳鳴りが絶妙なハーモニーを奏で出している。
ああ、もう…。
わたしは南雲の横顔をじっと見つめ、口を開いた。

「あれ、冗談なんかじゃないんでしょ?」
「冗談だよ」
「うそ」
「だっておまえ、本気で言ったらオレと絶交するんだろ。だから冗談てことで」
「…あのね、それもう本気で言ってんのとかわらないと思うんだけど」
「同感」

なんだろう、この気持ちは。嫌な言い方だけど、わたしは男の子に告白されるのは慣れている。その度にきっぱりはっきり断ってきた。わたしは男の子が嫌い、いや大っ嫌いだから。でも、じゃあ、南雲は?たったひとりの友達、だし、もちろん好きだ。でもそれは南雲を男の子として見てないから成り立つ感情であって。

「おまえさ」
「なに」
「オレとずっと一緒にいたいと思う?」
「…疑問形のプロポーズ…?」
「ちげーよ馬鹿。大人んなってもこうやって会って話したりしたいかって聞いてんの」
「あ、そういう意味か」

わたしは南雲から目をそらして、風で揺れてキィキィと音を立てるブランコを眺めた。南雲と、ずっと一緒に、ね。そうだな、それはいいかもしれない。わたしが唯一心を開いた相手だ。…なんか、人になつかないペットみたいだな、わたし。まあそれはいいとして。わたしは、一生南雲とのこの絆を大切にしたい、って、思ってる。それは間違いない。だからはっきりと答えた。

「うん、思うよ」
「…そうか」

じりじりと照りつけてくる太陽の下。いまだおさまらない耳鳴り。気まずいわけではないけど、続いてしまう沈黙。
しばらくして、南雲が立ち上がった。

「オレ、今日は自分ちで勉強する」
「あ、うん。わかった」
「じゃあな、また明日」
「ばいばい」

軽く手を上げ、背を向けて走って行ってしまった南雲の後ろ姿を、焦点が定まらない目で追った。
…そうだ、勉強しなきゃ。
そう思って、わたしもベンチを立った。




(すきってなんなの)












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