「さっき告白されてたでしょ」
机をはさんで反対側にしゃがんで、マンガを読む南雲の顔をのぞきこんだ。眉間のしわが増えて、ぎろり、なんて効果音がしそうな目でわたしをにらむ。
「また見てたのかよ」
「見てたんじゃない、見えたの」
「趣味わるい」
「故意じゃないってば」
制服の白にはえる綺麗な黒髪の女の子だった。確かふたつとなりのクラス。かわいいってうわさになってたから、どれほどなのかと思って見てみれば、言われるだけはある美人さん。スタイルもいいし、ちんちくりんなわたしとは天と地の差。
「OKしたの?」
「するわけねーだろ」
「なんで」
「はあ?」
お前ふざけてんのか、と言いながら南雲がわたしのほっぺたを左右ともぐいぐいひっぱる。いたいいたい。南雲さんちょっとくらい手加減してくれないとわたしのほっぺたちぎれちゃいます
「だ、だってさ、あの子すごいかわいいじゃない。もったいなくないの?」
「あぁ、もったいねーなあ」
答えながらもひっぱりつづけられる。いくらわたしのほっぺたがまるまるしてるからってこんなに強くしかも長くひっぱられたら皮ふの下の脂肪がつぶれていきそうで心配になる。小顔になるんならまあいいけども、荒療治っていうか、うん、いたい
「じゃー、なんで」
「オレはお前みたいなブスの方が好みなんだよ」
ほっぺたにあった手が移動して、唇をすうっと撫でた。わたしは何も言わず立ち上がって前に乗り出すようにして、向こう側のイスに腰かける南雲の唇にそれを重ねた。うっすら目を開けると、ちゃんと目を閉じてる南雲が見えて、ああ、恋しいなあって。
口付けろマイディア
20100509