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どきどきどきどきどきどき。

心臓がくちからでそうなんだけどスーパーでそんなホラー映画顔負けのグロテスクさを披露するわけにもいかないのでわたしは必死にこらえています。だだだだだっていま奇跡が起こったんだもん……!玉砕覚悟で誘ってみたら、 「いまちょうどきみを誘おうと思ってたところだったんだ」 って……びっくりしすぎて一瞬宇宙が見えた。ちょっと昇天しかけた。つまりそれってわたし……!期待してもいいのかしら……!とりあえずありえないくらい心臓がフル活動していてうぐあああああ寿命が縮んでくぜ!とか思うけどそれどころじゃない。ほんとだめもとだったからうれしすぎて涙が出そうだ。あともうちょっとでふつうにともだちからお誘いがきそうでびくびくしていた。チキンなわたしはたぶん吹雪くんを誘うのをあきらめ無難に彼女らとお祭りに行っただろう。……よし、せっかくオッケーもらえたんだから細かいことも決めとかないとね。 「吹雪くん?あのね、それで待ち合わせ場所なんだけど」 まあ当然誘ったわたしが彼の家にむかえに行くつもりなんだけど、 「僕むかえに行くよ」 ……え、 「え、でも」 「そうしたいんだ」 「へっ、あっ」 えええええええ?吹雪くん、わたしんちまで来てくれるの? 「うん、わかった……」 いまちょっとズッキュンってきた!胸になんかささった!このぺたんこな胸に!まったくもう、吹雪くんはいつもわたしをきゅん殺ししたいのかってくらいかっこいいから困る。ちくしょうわたしも吹雪くんをときめかせてみたいもんだ。……だからこそわたしはいまスーパーに来てるんだけどね!ゆかた売り場で悩んでんだけどね! 「そうだ、吹雪くんさ、ピンクと水色ならどっちがすき?」 「ピンクと水色?うーん、どっちもきらいじゃないけど」 あ、わざとらしいかな、ゆかたってばれるかな。ばれちゃあ意味ないな、せっかく彼のすきな色のゆかた買おうとしてるのに。 「あっあのあたらしい自転車の色なんだけどね!自転車の!」 「へえ自転車かあ」し、信じてくれたっぽい、かな?わたしはたしかにこの前自転車を壊しちゃってるから、苦しい言い訳にはならないはずなんだけど……。 「なまえさんはどっちがすきなの?」 「わっ、わたし?わたしいつもならピンク選ぶところなんだけど今日はなんだか水色もいいかなって気分なような」 「そっか」 だって水色ってなんだか吹雪くんのイメージがあるんだよなあ、吹雪くんは水色どうかなあ。「みみみみずいろ可愛いなあえっとほらなんていうか、あのえっと吹雪くんみたいで」 「僕みたいで」 「やっ……」 あああああ間違えた、いまの言い方じゃなんかへんだよ!水色可愛い=吹雪くんみたいでってなんだよ!吹雪くんみたいだから水色可愛いってなんだよ!吹雪くんはたしかに可愛いけどわたし的にはかっこいい成分の方が割合が高いというか 「あのちがっ、えっとあの」 「なまえさん、大丈夫だからちょっと落ち着いて。はい深呼吸」 吹雪くんが笑いながらそう言って、わたしは素直に従って、すー、はー。……ふぅ、だめだだめだ、わたしテンパりすぎ。ふつうに、ふつうにいかなくちゃ、へんな子だって思われてしまう。すきなひとにそんなふうに思われるのだけは避けたい。 「……じゃ、じゃあ、みみ水色初挑戦!してみる!」 「うん、きっと似合うよ」 「えへへへそうかな!楽しみにしててね!」 「でも僕今日きみをうしろに乗せるつもりでいたんだけど」 「えっ?……あ……」 そ、そっか、吹雪くんはわたしが新しい自転車買うんだと思ってるんだった! 「せっかく新品なんだし乗りたいよね」 「え……えっと……」 えーと、えーと、どうしよう、なんて言ったら怪しまれないかな。い、いや!というか!吹雪くん、わたしを乗せてくれるつもりだったんだ。ゆかたじゃあ自転車はこげないし、ここはお言葉に甘えておこう! 「きょ、今日は、乗せてほしい、な」 「うん」 う、うわあ、あたらしいゆかた着て、吹雪くんのうしろに乗れるなんて……!いいなあ、すごくいいなあそれ!うらやましいぜわたし!考えただけで顔がにやけてしまう。それってもしかしたら、恋人どうしみたいに見えるんじゃないかな。あああああ今夜が楽しみすぎる! 「あ、時間は?どうする?」 時間、えーと、いまゆかた買って、家かえってかるくごはん食べてシャワー浴びてゆかた着付けてもらうから、そうだなあ……。 「し、7時とかは」 「うん、いいよ」 「じゃあ7時で――」 ちら、と店内の時計を見ようとしたら、わたしが候補にいれていたピンクのゆかたをレジに持って行くお母さんの姿が目に入った。 「あ、ちょっ、お母さん、待って待ってわたし水色にするから!レジ持ってかないで!待って!水色にする!」 せっかく彼にも聞いたのにこれじゃまったく意味がないじゃない!とにかく止めなきゃ!あっでも吹雪くんと電話つながりっぱなしだ、 「――と、ごめんね吹雪くん、それじゃああとで!」 「はあい、じゃあね」 ぷつん、つー、つー。 ……ん?気のせいかな、吹雪くんいまちょっとわらってた?あ、レジに持って行く、なんて言ったから、自転車じゃないのばれたかな。えええそれは困る……!『突撃!ゆかたで悩殺大作戦』がハナから失敗してしまう!ゆかたで行くつもりだとあえて言わないでおくことでききめが大分ちがうと予測されるというに!……まあ、しかし、わたしにしてはがんばったんじゃないだろうか。というか吹雪くん、かなりの確率で他の女の子と行く約束してると思ってたのに、まさかわたしを誘おうとしてくれてたなんて……うおおおおお燃えてきた!神様がくれたまたとないチャンスなのだ。今夜ぜったい、告白、するぞ!!



20100813


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