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どきどきどきどきどきどき。

ちょっと僕やばいんじゃないの?え?やばいんじゃないの?大丈夫なのこれ?というくらいに心臓が脈打っていて、受話器を持つ手は無意識にがくがくと震えていた。なんなのこれ、僕の意思とはまったく関係なくがくがくしてるんだけど。神経ちゃんとつながってるのかな。あとなんだか全力疾走したあとみたいに呼吸が乱れてる気がする。ぜえぜえする。もしかして僕あぶない病気なんじゃないだろうか。余命何ヶ月とかそういうかんじの 「吹雪くん?」 わあびっくりしたもうまた寿命ちぢんだってばほんとやめてほしいよ不意うちは。 「あのね、それで待ち合わせ場所なんだけど」 待ち合わせ場所?そんなのきみの家に決まってるでしょ、 「僕むかえに行くよ」 「え、でも」 「そうしたいんだ」 「へっ、あっ……うん、わかった」 いまちょっとときめかせられたかな、そうだといいな。いつも僕ばっかりきゅんきゅんさせられて不公平だと思ってたんだよね。 「そうだ、吹雪くんさ、ピンクと水色ならどっちがすき?」 「ピンクと水色?うーん、どっちもきらいじゃないけど」 なんの色かな?あっわかった、もしかしたらゆかたかな。なまえさんはかわいいからどっちも似合うと思うしどっちも見たいけどなあ。 「あっあのあたらしい自転車の色なんだけどね!自転車の!」 へえ自転車かあ。そのわりには近くのスーパーの衣服売り場で流れてる曲が聞こえるんだけど。 「なまえさんはどっちがすきなの?」 「わっ、わたし?わたしいつもならピンク選ぶところなんだけど今日はなんだか水色もいいかなって気分なような」 「そっか」 「みみみみずいろ可愛いなあえっとほらなんていうか、あのえっと吹雪くんみたいで」 「僕みたいで」 「やっ……あのちがっ、えっとあの」 「なまえさん、大丈夫だからちょっと落ち着いて。はい深呼吸」 すー、はー。……やっばいもうだめ僕。ほんとかわいいんだけどなんなのこの子。僕みたいってなんなんだ……髪の色?かな?僕に似てる色があったのかな。いつもピンク系のもの身に付けてるのにそういう理由で水色と悩んでるなんてうれしいな。なんというか僕色にそまれとかそういう……わあこれ恥ずかしいいまのなし。「……じゃ、じゃあ、みみ水色初挑戦!してみる!」 「うん、きっと似合うよ」 「えへへへそうかな!楽しみにしててね!」 「でも僕今日きみをうしろに乗せるつもりでいたんだけど」 「えっ?……あ……」 「せっかく新品なんだし乗りたいよね」 「え……えっと……」 ふふ、困ってる困ってる。僕ってサドの気あるのかな、なまえさんを困らせるのけっこうすきなんだよね。あ、困らせるって言ってもちょっとした意地悪ていどだけど。 「きょ、今日は、乗せてほしい、な」 うんうんゆかたじゃ自転車こげないもんね。 水色のあたらしいゆかたを着たなまえさんをうしろに乗せるのかあ、いいなあそれ、想像しただけで顔がふにゃってなりそうだ。できればそのまま連れ去ってしまいたいくらいだけど僕はそこまで常識のないやつじゃない。ああだけど考えれば考えるほど楽しみで仕方ないよ。 「あ、時間は?どうする?」 「し、7時とかは」 「うん、いいよ」 「じゃあ7時で――あ、ちょっ、お母さん、待って待ってわたし水色にするから!レジ持ってかないで!待って!水色にする!――と、ごめんね吹雪くん、それじゃああとで!」 「はあい、じゃあね」 ぷつん、つー、つー。 ……ふぅ、まさかなまえさんをどう誘おうか受話器と相談してるときに彼女のほうからかかってくるなんて予想外だよね。びっくりしたけどうれしかったなあ。いっしよに夏祭り行こうっていう、色んな子からのお誘いを断っちゃったけど、後悔はしてないや。今夜こそ告白できたらいいんだけど。





20100812


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テーマ「人外ファンタジー」
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