「黄瀬を見ているときに才能を知る。
「うん、やっぱり、そうだな。才能がなんなのかってことを突き付けられる。圧倒的差――――力量差。おれがあいつに勝っている部分なんて、経験と指導能力と主将やれるところくらいじゃねえのかな。
「真似だ模倣だとひとは言う。確かにその通りだし、おれだって練習して練習して身体に刷り込んできた大事なおれの強さを、ちょっと貸して、くらいの軽さでさらっとやられたときは軽い絶望すら覚えたさ。ああこれが才能か、と。思った。
「それでも強いんだよ、黄瀬は。
「確かにキセキの世代の中じゃあ一番弱いかもしれない。一芸特化型のオールラウンダー集団、ってえのか?のあいつらに比べればな、取るに足らなかったかも知れねえよ。
「ただあいつの模倣は、真似は、それ以上に学習なんだ。覚えることが異様に早いってえのかな。
「たまに怖くなるな、あいつのそう言うとことは。・・・・ああ、信頼してるし、チームメイトとして上手くやってると思う。あの変に冷めてるところも面白ぇしな。
「・・・・ただ黄瀬は気づいてねえみたいだけど、たまに、怖くなることがある。
「コピー以外にないってことは、変幻自在ってことだろ?もしかしたら青峰以上の型のなさ。あいつは何になるのか、どこまで成長するのか、まだ解らねえままなんだ。どこまでのばけものに育つのか、あいつ自身が解ってない。
「黄瀬は何になるんだろうな。うん、おれはそれが見たいよ。出来るだけ長く、同じコートで」


「天才、って言うヤツ。オレ結構信じてなかったワケよ。だってそうだろー?才能なんてどこに溜めてるんだよ。才能の在り処なんてだれも、しらない。
あー、ごめんごめん、緑間のことだっけ。・・・・ん?そうだぜ、真ちゃんって呼んでる。最初は嫌がられたんだけどなー。
「あいつのこと?あは、残念だけど、お前の知ってることくらいしか知らねえよ。堅物で偏屈で、これと信じたらそれしか貫かない真面目実直クン。かなありの変わり者。占いのラッキーアイテムが素晴らしいことになってて、変装がへたくそ。んで、ツンデレ。
「――――あー、そうだなあ、スリー。範囲が増えた。ってのは、知ってるか。だよな。
「・・・・真ちゃんの癖でさ、遠くを眺めるってのがある。そこにゴールは無いってえのに、ゴールでも見てるような目えしてさ。ぎらぎら光ってる。それは信号待ちのときだったり、ファミレスのサラダバーだったり、何てことはねえ部活の帰りだったりする。ただのいつもと変わらないときなんだぜ?なのに、ぎらって、光るんだよ。
「まあ答えは簡単。ま、最近知ったことだけどな。・・・真ちゃんさ、あるひとを倒したいんだって。そのせいで、赤いの見るとぎらぎらしてんのかもな。っはは、闘牛かってえの。
「毎日毎日、おんなじこと繰り返して。それにひと付き合わせてさ、やんなっちゃうぜ。本当、むかつくんだからよ、ここって時に繋いでくれってぎりぎりのパス出したとき、あの高弾道の変態シュートが決まったときのさ。
「羨望?情景?
「もう信用するしかねえじゃんかよ。これ以上ねえくらい頼っちまうに決まってるだろ。そんで隣に立てたらどんだけ、どんだけすごい景色が目の前にって。夢を見させるヤツだわ、ったく。
「そんなワケでまあ毎日、オレは我等がエースの補佐やって、相棒やって、あいつ曰くいつも通りに勝つだけさ。人事は尽くしてっからな、覗くくらいはいいだろ。天才の景色」


「青峰のことなんか嫌いに決まっとるやんか。何言うてんの自分。あんなむかつく後輩今までおうたことないわ。腹立つし、ほんま、調子乗ってるわ調子乗ってるわで。
「ま、勝てたらええねんけどな。ほらよう言うやろ?勝てば官軍てー、な。そこは帝光さんと似たようなもんちゃう?・・・似てるって、ちょうそっくり。最強帝光の、エース青峰。他のキセキらか?は、どこぞのチームでエース張ってんかもしれへんけどなあ。
「それでも、最強は青峰や。
「不動。変わらん。覆されへん。あいつは強い、勝てる奴。・・・ああ、せやな。負けとるな。あれは文句のつけようもないくらいの負けやった。全力でやって、それでも負けた。
「せやけどおれは繰り返す。最強は青峰なんや。
「・・・トーナメント制は確かに、そうやね、落とされへん。勝ち続けなあかん。そんで、今回は負けた。だからおれらはエンドや。
「青峰、なあ。最近笑うって若松が言うてたんや。部活のミニゲームでも、ちょっとしたシュート練でも、ロードワークでも。誰かに何かひとつ勝ったとき、
「笑うて。
「だからな、今度のあいつは、手ごわいで。勝つことの楽しさを知った。負けることのとんでもない悔しさを知った。そんな最強、青峰は。もう負けることを望んでない。
「勝つことを怖れて、負けることにこだわりつづけて、それでも強くしかなれんかった青峰くんはおらんくなってもうたんや。残ったのは勝利に執着する最強だけ。おれの、おれたちの、エース。
「青峰。
「あー・・・・・うん、その通り。もうおれは同じコートには立てんのやけどな。
「ええ夢、見してもろたわあ」


「大きなこども?ハ、笑っちゃうよ。
「まあ確かにそうなのかもしれないね。うん、それも一面だとは思うよ。確かにアツシはこどもっぽいし、駄々をこねているこどもそのものだ。
「でも、どうなの。こどもはあんなに圧倒的か?違うでしょう。少なくともあんなに、・・・・あんなでは。ないでしょう。
「あいつのことばは残酷だよ。強ければ強く、弱ければ弱い。そこに一切の努力は認められない。ボーナス点なんて存在しないんだ。一貫している。ある意味で居て素直なのかもしれないね。殴りたいことには変わりないけれど。
「あいつ自身はきらいじゃあないんだよ?むしろ変なところが変だから、愉快なくらいさ。あいつ、自身は。ね。
「ふ、そうかもね。おれがきらいなのは、おれなのかもね。
「まあどうでもいい話だよ。アツシは強い。おれは、・・・・どうなのかは聞いたことがないけれど。あ、でもそう言えばこの前ね、悪くないって言ったんだよ。
「アツシが、バスケを。
「きらいかい?って、聞くとね。悪くはないんじゃないって。全くばかなやつだ。いつすきだって言うんだろうね。まあ、結局おれはどちらだって構わないよ。
「あいつが居るだけで、安心してプレーできる。それは変わらないんだし、アツシがどう言おうが変われない。
「おれとアツシはチーム。それだけだからね。それだけはすきもきらいも関係なく、決まっていること。おれは彼を信用しているし、アツシは・・・・パスを、回してくれる。それでいい。
「それだけで、いい」


「赤司くんについて、僕が知っていることは余りにも少ないんです。何も知らない、それが正しいのかもしれません。
「それほどにあのひとは、掴めないひとだった。・・・最初は、あそこまでではなかった、はずなんですけどね。
「何かがおかしくなってしまったように思えます。回路がうまくイコールしていないって言うんですか?洛山の皆さんも、勝つことに対してはかなりストイックですし。きっと赤司くんとは、それこそ、協力者のようであるのでしょう。
「よかったと言うべきか、悪かったと言うべきか。いつか誰かが彼のことを、終わらせてやることが必要なんでしょうかね。・・・・・どうなんでしょうね。解らないんです、ずっと。
「勝つことが基礎代謝。
「すべてに勝つ僕はすべて正しい。
「それは当然のことなんです。何らおかしいことなんてない。それこそ正しく、それこそどうしようもないくらいの真実なんです。彼らキセキの世代は。――・・・・恐らく僕も。傲慢だったけれど。とても驕りにまみれていたけれど。
「赤司くんだけは、別なんです。
「彼のあれは傲慢でも何でもない。ただの真実で、ただの本当。彼は嘘をつかないひとですから、語ることばに偽りなんてありません。捜したって無駄なくらいですよ。
「・・・・・だけど、だから、どうするんでしょう。負けたらあのひと、どうなるんでしょう。
「全部が嘘になってしまったとき、赤司征十郎と言う人間は何に成り下がってしまうんでしょうか」


「黒子はそうだな、変な奴だな。マイペース?
・・・・あー、やー、やっぱちょっとちげえかな。それしか見えねえってえのか?あいつがキセキに対して言うところの傲慢。それって黒子自身にも当てはまってるんだと思う。
「だってぶっちゃけパスも才能だろ。フィジカルで劣っている敵は多いかもしんねえ。アジリティで勝てない相手は多いのかもしんねえ。でもさ、そいつらが持ってないもんをあいつは持ってる。それだけで、チャラだろ。キセキの世代が恵まれすぎてるだけじゃねえ?
「まあ、俺なんか所詮同じ穴の中、なんだろうけどな。
「でも黒子は才人だよ。天才までは行かないのかもしんねえけど、あいつは秀才じゃあねえ。努力もあるだろうが、そんなもん、努力なんて誰だってしてる。
「キセキの世代、その五人には組み込まれてねえんだろうよ。だけどさ、黒子は凡人じゃねえ。本人がどう言おうが、それは変わんねえ。
「黒子は強ぇ。伊達に帝光でスタメンやってなかったんだよな。
「あいつが一緒に勝つ、そう言った。してやる、じゃなくて、したいって。日本一になりたいって。諦めたくねえって。
「変わった、んだろうな。俺もか?・・・・どうだろうな、わかんねえ。まあでも、おれも黒子もキセキ連中も、コートの上ではじめて息してるみたいなとこ、あるからな。っはは、ポエミーか。黒子のが移ったかもな。
「まあ兎に角、光とか影とかそんなややこしいことじゃなくて、おれと黒子はただ相棒なんだよ。一緒に勝つ。チーム全員で勝つ。それだけだな、うん、悪くねえだろ?」



迷彩インタビュー



「・・・・・やっぱり男の子って、いいなあ」