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    所々錆び付いた電車に揺られて、凛さんに会うため鮫柄に向かった。僕を見て、素直に痛ましい顔をしてくれるのは、きっと彼しかいないだろうと思ったから。
    とても久し振りに再会した凛さんに、かいつまんだ事情を話して聞かせる。屋上で真琴先輩と会ったこと、真琴先輩に毎日お弁当を作っていること、他にもたくさん。思いつくだけ。
    僕の口にした全てを、黙って聴き終えた凛さんは案の定、酷く痛ましげに顔を歪めて、どこまでも、僕を哀れんでいるように見た。見るだけで、糾弾しないのは、渚くんと違って凛さんにはその権利が存在しないことを知っているからかもしれない。凛さんのそういう、察しのいいところが、昔はある程度疎ましかった。今はむしろ、その聡さがありがたくもあるのだけれど。
    僕は声を殺して笑う。呆れた顔をした凛さんが、気怠い仕草で目を逸らした。

「それで、俺に何を聞きたい」
「ふふ、ふ、そうでした。すみません」

    聞きたいことは簡単だった。単なる確認と等しいとも言えた。

「凛さんは幽霊を信じますか」
「信じねえ。んなもん、見てる奴の願望だ」
「……そうですね。僕も、そう思います」

    本当にその通りだ、と小さく呟いて、僕はその場から未練なく立ち去る凛さんの背中を見送った。
    もう一度、あの人に会わなければならない。きっとそれが最後になる。


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