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    二度目に、僕が屋上を訪れた時、真琴先輩は相変わらず何事も無かったかのようにそこにいた。扉を押し開けた僕に向かって、見覚えのある包みをゆらゆらと揺らしている。声はなく、唇だけを動かして、フェンスに背を凭れさせた真琴先輩が「ごちそうさま」と笑っていた。
    自身を鼓舞するため、わざと高らかに足音を立てながら真琴先輩の方へ歩み寄る。無言で手を差し出すと、先日僕が忘れていった弁当箱が、まっさらに軽くなって戻された。

「……食べたんですか」
「食べたぞ?」
「空腹だったんですか」
「まあ、それなりにね」

    一切悪気のない顔でそう言ってのける真琴先輩に、僕はひとつ、溜息をついて手の中の包みをくるりと回した。別に、何も異常は無い。ただなんとなくそうしてしまった。
    ちなみにですが。そう、前置いてから。

「何が一番美味しかったですか」
「あー……卵焼き、かな」
「そうですか。自信作でした」

    僕の言葉に、真琴先輩はあのお弁当怜が作ったのか?と大変驚いた表情を浮かべた。遙先輩に料理を教わっていますので、だとか、甘い卵焼きお好きでしたよね、だとか、言いたいことはたくさんあったけれど、とりあえず。
    ……驚きたいのは、こっちです。


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