模倣とペルソナ | ナノ


  07




 気付いたらいつの間にか、部屋に朝日が差し込んでいた。人間、やれば出来るものなんだなあと一人勝手に感嘆していると、ベッドの枕脇に置いてある目覚ましが音を出す。
 正直、必ずと言って良い程目覚ましが鳴る前に目を覚ますので、この目覚ましにあまり必用性は無い。まあ無いと無いで不安になる自分の厄介な性格故に、この目覚ましには小学生のときから世話になっている。

 一つ欠伸をして、机の上を見遣る。我ながら良くやったなぁ。これならばもう柳くんの字を書けるだろう。
 ぱらぱらと今まで自分が書いたノートのページを捲りながら自己満足に浸っていると、扉を叩く音が部屋に響く。おっとまずい。もうそんな時間か。
 寝巻から制服に着替え、予め用意しておいた鞄に、柳くんのデータノートと筆箱を突っ込んで抱える。
 部屋を出て階段を降りれば、白米の良い匂いがした。今日は和食か。

「おはようございます。」
「おはよう。今日は和食にしてみたの。出来るだけ食べるときに手間がかからないようにしたつもりだから、焦らずゆっくり、きちんと噛んで食べてね。」
「わかりました。頂きます。」

 お椀片手に時計を見ると、いつもより幾許か早い時間。じゃあゆったりしていられるな、と意気込んでご飯茶碗を片手におかずを口に運んだ。


模倣とペルソナ


 結局、朝食をゆっくり食べても家を出るのは普段より早かった。
 まあ早く出るに越したことは無いし、なんだったら部室で皆を待っている間に少しでも仮眠を取ろう。いや、でも。

「柳くんのデータノートが、もしかしたらあるかも……、」

 考えていた言葉はそのまま口から出ていた。そうだ、そうだろう。流石に、あんなにも大量のノートを持ち歩くだなんてそんなこと、柳くんがする訳も無い。
 有言実行。思い立ったが吉日である。まずは柳くんのロッカー、それから沢山の情報が入っている棚。……その二カ所を探した時点で大分時間を喰っているだろうから、探すのをやめることになるだろう。

 その他諸々、いつも通りの準備もしなければならない訳だし。ノートを探すとなると今のままでは絶対に時間が足りない。頭の中で結論付けた瞬間、少し緩めに走り出した。……朝食を、食べすぎたかもしれない。

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