03


 残念ながら、ユニットでいつも使っている部屋には誰もいなかった。というか、部屋の鍵すら開いていなかった。一つため息を零して、ドアノブから手を離す。ひんやりとした金属の触感がするりと手から抜け落ちた。

 そういえば、先程の黄金色は、今どんな色になっているんだろう。窓の方に向き直ると、そこには先刻とはまた違う色が廊下に広がっていた。夕日の角度からか、廊下の日が当たる面積が広い。

 これは世間一般では何色になるのだろうか。いや、こんな色の名前を覚えているのは自分くらいなものだと考えていたから、そんなにメジャーなものではなかった筈だ。ああでもないこうでもないと思考を繰り返し、もう少しで出てきそうなところで、今の心情をそのまま口に出して唸り声をあげた。

 このまま立ち往生していても仕方がないと割り切って、昇降口の方向へ足を進める。何だったかな、あの色。

 もう喉まででかかっているのに出てこない、今も自分の足に降りかかる夕焼けの鮮やかな色の名前をどうしても思い出せなくて、心に霞がかったまま、いつもよりもゆっくり、ゆっくりと歩いた。



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