02
突然だが、俺には好きな奴がいる。
日曜日のヒーロータイムのヒーローは、皆のヒーローなのだから、付き合ったりなんかしないだろう。と、反論する人もいるだろうな。だが、その考えは甘い! 最近のもので例えるとキョウリュウジャーか。キング……役名よりも色のほうが分かり易い。赤とピンクがくっついた。
要するに、だ。
ヒーローだって恋愛をするのだ。逆にそれを力にして悪を叩く。素晴らしいことだと思う。
金で買えないものは、ある。真実の愛である。
ぶっちゃけ、俺は偽りの愛なら余裕で金で買えると思ってる。イメージぶち壊すことになるので言わないがな。
さて、その片思い相手について説明しよう。
まず容姿。眼鏡をかけている。釣り目ではない。真ん中分けで、髪が少し緑がかっている。綺麗な髪だ。体育の準備体操でランニングする時に、髪がぴょこんぴょこんしてすごく可愛いんだ。残念ながら身長は相手の方が少し高い。だが体重は同じだ。あいつは筋肉が無い。
そして俺が惚れた、いや、惚れざるを得なかった一番の要因は、何と言っても顔! 顔だ! 可愛いを残しつつ少し鋭さもあってな! 鼻筋が綺麗でもう滅茶苦茶好みだ! 何を隠そう一目惚れだった! 悪いか! いいや悪くない! 愛は偉大!いつもは眼鏡で隠されているあの綺麗な瞳をできることならじっと見つめていたい! 天祥院の退院が決まったとき嬉し泣きしたんだぞあいつ! 隠しどりした! すまん! 背徳感と罪悪感はある! しかし後悔も反省もしていない! んん? 矛盾してるかこれ? 知ったことか! あいつの唇はとても整っていてな! 心配するな、しゃぶりつきたいだなんて俺は一度も思ってないぞ! それに頬! 欲望に負けて一度だけ触ったことがある! 柔らかい! あいつが寝ていた時に思わず触ってしまったのだがこれではただの変態だ! ばれていたらどうしよう! だがしかし柔らかかった! もうこの世のものとは思えない肌触りでずっとむにむにしていたかった! 可愛い!
……すまん。落ち着いた。
で、だ。俺はそいつと付き合いたい。できることなら突き合ったって良い。すまん冗談だ。しかし、大きな壁が二つ程ある。
一つ目。これは身長と体重の時点で察しがついていたかもしれないが、相手は、男だ。名前を蓮巳敬人という。名前さえ愛おしい。まあ性別の壁なんぞ知ったこっちゃない。もともとは俺だってノンケだ。たまたま好きになったのが男だっただけであって、ノンケだ。もう一回言うぞ。俺はノンケだ。大事だからな。三回言った。テストには出ないぞ。まあホモとかゲイ──俺には違いがわからん──が、うようよガヤガヤしているこの学院だ。大丈夫だ。多分。俺はそう信じてる。信じたい。
そして二つ目。これがまた厄介だ。きっとあいつは、蓮巳は、俺のことをよく思っていない……! こんなに悲しいことがあるだろうか。俺は生まれてきた中で一番悲しいであろう感情を抱いている。猫の交尾を見てしまった時の数十倍悲しい。
まあ、やるなと言われたことを何度もやってるし、仕方ないとは思うんだ。
しかし! ここに来て俺はビッグチャンスに恵まれた! 次の校外学習で同じ班になることに成功したのだ! 蓮巳は大体天祥院と同じ班になることが多いから、そっと近付いた。勿論天祥院の方にだ。俺のことを好いていない蓮巳に言っても門前払いを喰らうだけになりそうだからな。こんな感じの策は今までに何度もやっている。こう見えて俺は策士だ。蓮巳に褒めてもらいたいくらいだ。すまん冗談だ。
まあ、ビッグチャンスと言っても、特に何もないんだがな。二人だけでわざとはぐれるにしたってあの蓮巳がそんなことをする筈ないし、きっとあいつは天祥院に付きっきりだろう。仕方あるまい。俺は近くで蓮巳を見ることができればそれで満足なんだ。