自分の限界を感じた


 シュートが入らなくなってからというもの、オレは部活に出るのが怖かった。
 3Pという、頑張って頑張って頑張って漸く手に入れた唯一の取り柄が、無くなったのだ。3Pの打てないオレに存在意義は無い。ひしひしと全身に伝わってくる、周りの人間のそんな思考。
 知ってるさそんなこと。だから、オレはもう用無しなんだ。「天才」じゃない人間は、ここにいてはいけないんだ。彼らの隣に並んでは、いけない。

 オレの3Pが入らなくなってから、心做しか嫌がらせが増えた気がする。くすくすと、まるで蔑むかのような笑い声が、前にも増してよく聞こえるようになった。
 それから、何日か経った頃だと思う。練習に行くのが嫌で。あの雰囲気に、嫌悪感に溢れて、他人から向けられる負の感情がオレの体を覆う感覚が嫌で堪らなくて。それでも無理矢理体を突き動かして朝練に行って、体育館に足を踏み入れた、瞬間。冷や汗がぶわりと吹き出した。暑い訳でもない。体調が悪い訳でもない。でも何故か、冷や汗が流れ続けた。
 後から来た奴らは、オレが朝早くから来て練習していたと思ったのだろう。「朝早くからご苦労なこって」「3P入んねえくせにな」なんていう言葉がちらほらと聞こえた。ずくりと胸が痛む。まるで鋭い刃のようにその言葉はオレの体を貫いた。
 朝練が始まる。その逃げ様も無い事実を認識すると、ドクン、心臓が一際大きく脈を打った気がした。流れ出る汗が首筋を伝う感触がする。唾を飲み込んだ。口の中がじんわりと熱い。

「緑間!」

 誰かの声が聞こえた。視界が少しずつ狭くなっていく。黒いような群青のような、ちかちかと点滅を続ける何かが、オレの視界を狭める。オレの視界が黒で覆われて、瞼を開くことすら億劫になったとき、誰かがオレを呼ぶ声が、微かに聞こえた。


 暗転。




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