シュートが入らなくなった

 なんなんだ、キセキの世代だ天才だなんだって。「天才だから良いよな」、「やっぱやることが違うよな」、「天才様に任せときゃ」、「天才は」、天才は天才は天才は天才は!
 嫌味ったらしくぎりぎり聞こえるくらいの声量で言われ続けて、精神がどうにかならない方がおかしいだろう! 
 その時の記憶が脳裏を駆け巡る。色んな奴らの色んな陰口はオレの記憶に残るのに 十分な威力を持っていた。オレはこんなことを言う奴らとチームなのか、仲間なのか。もうこんなの仲間ではないだろう。仲間、とは、一体なんだったのか。

 否、仲間なんて最初からいなかった。あいつらは、オレをただの邪魔者としか扱ってなかった。あれはオレが打つべきだあいつがいるせいで点が取れないあいつさえいなけりゃもっと気楽に練習できんのに。
 勿論その言葉は自ずと耳に入ってきた。練習に来て何が悪い。一生懸命やって、何が悪い……!
 もしオレが練習に行かなかったら真面目にやらなかったら。またあいつらは言うんだろう、天才だなんだと!
ならばオレはどうすれば良い。真面目にやってもやらなくても責められるのは結局同じだ。それで、何故だか副主将なんてものになってしまったばかりに。勝利が基礎代謝である主将の代わりに、代わりにだ。オレが叫んだ、怒鳴った、ひたすらに小言を言った。勿論赤司も言ってはいたが、あいつにはカリスマ性がある。俺が悪役になるのに時間はかからなかった。

 お高くとまりやがってなんて、そんな言葉とっくのとうに聞き飽きている。オレだって好きでこんな性格な訳じゃない。いや、言い訳に聞こえてしまうかもしれないがな。こんな性格の人間がいる筈が無いだろう。もっと社交的だった、感情豊かだった、素直だった。想像ができないだろう? 昔は本当に、沢山の仲間と、大事な友達がいたんだ。

 それを、あいつらが、オレのことを天才と呼んだやつらが、歩み寄ったオレを突き放した。どれだけ必死に話しかけても、友好的に接しても利用できるところだけ利用してポイ捨てだ。ふふ、そうだ。そんなことされたら人間不信になるに決まっているだろう! 塞ぎ込むに決まっているだろう! オレがこんな性格になったのはあいつらのせいでもあるんだよ……! 都合の良いあいつらのことだ、責任転嫁だって言うんだろうなあ。ふざけんな、ふざけんなよ……っ!

 でかいだけの木偶の坊、邪魔者、変人。挙句の果てに「キセキの足手まとい」だと? そんなこと、当たり前だろう。言われなくとも自分で理解をしていた! オレは天才じゃないんだわかってくれ! 天才でもなんでもない一般人のオレが、天才の中にぽんと放り出されて! 普通にやっていくとか無理に決まっているだろう!
 だから見劣りしないように、「天才」っていうハリボテで作られたオレを、どうにかして本物の「天才」に近付けたかった。誰よりも遅くまで残って練習もした。3Pを何本打ったか、どれだけの時間を費やしたか分からない。でもやっぱり、才能には、敵わないんだ……! やっと形になっても努力を認められない、認識をされない! 結果は「だって天才だから」の一言で終わりだ!
 天才だから外れない外さない。天才3Pシューター緑間真太郎が3Pを外すということはよっぽどのことが無い限り有り得ない。
 ッそんな訳ないだろう! オレは人間だ! 精密機械じゃない! 何故期待をしているんだ!
 オレがボールを持つ度に全員が纏う雰囲気が、外すなっていう無言のプレッシャーが、どうせ入るだろっていう理不尽な逆恨みが、またかよ天才様は良いねえなんていう妬みが! オレの体を縛り付けて動けなくさせてんだよやめろやめてくれ。人間に絶対は無いんだ、必然なんてことも無いんだ。だから、だから、


「そんな目で、こっちを、見るな」


シュートが入らなくなった緑間君のはなし




×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -