明日は槍が降るでしょう
「いや、その、」
「御託は良いからさっさと謝りやがれ。謝罪だ謝罪!」
宮地の怒声が飛ぶ。お約束である轢くぞも勿論のことついてきた。
床に正座をし、宮地とその隣に並ぶ日向を見比べながら、緑間は微かに眉を顰める。
考え事でもしていたのだろうか。言われて数秒の間を空けた後、緑間は言葉を発する為口を開いた。
「日向さん。」
「お、おう……?」
「先程の発言、申し訳ありませんでした。いくら何でも言い過ぎたのだよ……」
そう言いながら深々と手を付けて頭を下げる。無駄に綺麗な仕草だった。こんなところでも育ちの良さが出るなんて。大坪は見当違いのことを考えた。
え、緑間ってそんなことする奴だったっけ。プライドは一体どこへ行ったのだろう。その場にいる多くの人間が頭の上に疑問符を浮かべた。そんなことを気にする素振りを少しも見せず、緑間は淡々と話を続ける。
「きっと、宮地さんの口の悪さが伝染ってしまったんだと思います。宮地さんは物騒なことを言っていても根は優しい人なんです。勘弁してやってください。」
「はぁ? 緑間てめぇ何言ってやがる。その口縫うぞ」
「み、宮地さんっ! 落ち着いてください!」
「……日向、」
宮地は驚いた様に日向を見た。あのダァホとかの暴言を吐く男が、こんな風に引き下がるものなのだろうか。そんなことを考えて、宮地は首を傾げながら眉を寄せる。
「オレはもう良いんで! あの緑間の土下座見れただけで十分ですし!」
ああ成る程ね。日向の言葉は宮地の心にすとんと落ちた。
まあ、確かに。緑間の土下座する姿なんて、もう一生見ることは無いだろうからな。
まず緑間が人に謝るということ自体珍しいのだ。明日槍が降るのではないか。それくらい貴重である。
「……まあ、オレの方こそ、何か癪に障ったからやられたんだろうしな。」
がりがりと頭を掻きながら日向が呟く。緑間は「違います。完全にオレのミスです。」と呟いた。