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「……なあ、ここ?」
「ええ。そうですよ」
二つの影が並ぶ。背丈は似ていた。声からして男らしい。彼らの足元には、それぞれ猛獣が存在を主張している。少し小柄な方が鼻をひくつかせた。
『主、』
「どうしましたジル」
グルルと狼が唸り声を漏らす。どこか、警戒しているようにも見えた。きょろきょろとあたりを忙しなく探る。そんな姿を見て、柳生比呂士は苦笑した。
『厭な予感がして止まぬ。臭いも何か可笑しい』
鋭い目を光らせながら、狼──ジル・グレイドは言った。
『狼は心配し過ぎなんだって』
目を細め、くあと欠伸をする虎。果てには、顔を洗い出した。ああ、雨がふるのかな、と柳生はどこか他人行儀な思考をする。雨の日は嫌いではない。
「こらクロライド。ジルは比呂士のこと心配して言ってんの。それともなんだ? ライドは俺のこと心配してくんねェの?」
『そんなことはない!』
「なら良し。でも、お前もうちょっと緊張感持て。」
『……わかった。亮』
しょぼくれた様子で、宍戸亮の召喚獣であるクロライド・レオは頷いた。反省している様子を見、宍戸は満足気に口角をあげる。
「じゃあさっさと、」
「世界でも救ってしまいましょうか」
これは、
魔界から来た
ある二人のお話。