「おーおはようさん丸井。早いのう」
「お前もな。」
「そうけ? 十分くらい早いだけじゃろ。」
「いやそれにしたって早いじゃん。なんで?」
「今日は部室で少し課題やろうかと思っての」
「あの仁王が……?」
「ブンちゃんその顔やめれ」
「ちぇ」
「可愛くなーい」
「ハルくんこそー」
沈黙。何してるんだ俺ら。冷静になった容赦のない己への突っ込みが心の中で炸裂した。
「早く着替えるぜよ」
「おう……」
俺達は着替えだした。丸井はまだネクタイを外しただけだったようす。こいつ着替えんのおっそいもんな。俺のが先に着替え終わった。
「さー宿題やっかの。」
「お前床に座ってやんのー? 汚ねえぞ?」
「おおぅそれ昨日真田にも言われたぜよ」
「まじで?」
「おん。おまんら、やっぱり結構似とるんじゃなか?」
「……」
「およ」
言われたくなかったのであろうか。やってしまった。何で俺は調子乗るとすぐにこうなっちまうんだ。反省会の開催は早い。
「仁王、」
「なんじゃ?」
「俺、さ」
「やっぱ、真田とは仲良くなれねぇわ」
「……は、」
な、ぜ。何故だ、なぜ、なぜ。昨日はあんなにも楽しそうにしてたじゃないか。人間の感情とはこんなにも著しく変わるものなのか。あまりにも、そんな。昨日、真田があれだけ楽しそうにしていたというのに。
「な、んで」
俺は丸井を見た。丸井はこれ以上ないくらいに冷静だった。少なくとも俺にはそう見えたんだ。
「別にいいだろ! さっ、練習行こうぜぃ!」
急に上がったテンション。ああ成る程。柳生が来たからか。窓の外から見慣れた茶髪が見えた。今日は珍しく少し遅い時間に来たな。
「じゃ、仁王。俺先行ってっから。シクヨロ!」
「おん。俺も終わったらすぐいくぜよ。」
柳生と一緒にな。
「おはようございます。」
「おはようさん」
「……どうかなされましたか?」
「なんでじゃ?」
「泣きそうな顔をしていますよ」
「……柳生。」
「はいなんでしょう?」
「ここの問題わからん」
「……ふぅ」
え、何その溜め息。ごまかし方おかしかったか?だって泣きそうなんて言われたらどうして良いかわからんのじゃもん。まーくん涙目。心の中で。
「その問題は、ここをここに代入して因数分解すれば良いんです。」
「おおう成る程。ありがとさん。柳生の教え方は上手いのう」
「ありがとうございます」
さて、課題も終わったところだ。丸井が待ってるから、早く行かんとの。
「……真田、」
俺は、何の為に相談を受けたんだろうか。これじゃあ意味が無い。