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仁王雅治の勝手な自己嫌悪

「……ふう、」

 何と言うか、その。疲れた。五時間目、国語だから多少は考え事をしていても問題あるまい。ぼんやりと黒板を見る。教科書の内容を朗読する教師の声ばかりが耳に留まっていた。
 昼休みのことを思い出す。
 何故丸井は、いきなり昼食に誘ってきたのだろうか。考えてもキリがない。まさか何かの罰ゲームがそうなのか? しかしそのような雰囲気は微塵も感じられなかった。──丸井は俺のことが嫌いではなかったのか? 疑問が頭から離れない。

「さーなだ! 俺と乱打しよーぜーぃ」
「良いぞ」

 まただ。丸井の考えていることが本当にわからない。一体何のために俺に接触してくるのだろう。が、頼られたり話し掛けられたりして嫌な訳ではない。正直に言ってしまうと俺も満更ではないのだ。昼に話したとき、丸井のことを表面上しか見ていなかったからか、弟のことを話す丸井にはとても共感できた。ただ問題は。あいつの心理だ。
 罰ゲーム、嫌がらせ、気まぐれ。
 もしかしたらそれ以外かもしれない。一体全体丸井は何故俺にいきなり近寄ってきたのだ。
 そう、いえば。

『仁王は、以外と口が堅いんだ。』

 確か以前柳がそんなことを言っていた気がする。こう言ってはなんだが、仁王とはあまり話さない。だが話さないからこそ話せることもあるのだろう。

「相談、してみるか」


「……おー、やっとるやっとる」

 手をひさし変わりにしてコートを見る。眩しい。因みに俺は自主休憩中じゃ。サボりとか言わんでけれまーちゃん悲しくてないちゃうおよよ。……乱打は相手に迷惑かけるから嫌いなんじゃ。

「真田と、丸井が……のう」

 二人でやっていた。ジャッカルが来ていないからなのかはたまた個人的な接触に成功して仲良くなったのか。正直よくわかっていない。

「……なんか、」

 嫌な予感がするなあ。大抵こんな時こそ何かある。多分。何かあったら嫌だなあ。「あふ」欠伸が零れた。
 ──長くて長い部活が終わった。日はもう既に傾いている。

「お疲れ様でした。お先に失礼しますね」

 いつものように礼儀正しいパートナー、柳生が部室のドアを開けながらお辞儀をした。
 今日は、一緒に帰れないのか。最近帰れてないのう。次一緒に帰るときは少し遠回りして出来るだけ長くいられるようにしよう。あ、いやまさかもしかして俺と一緒に帰るのが嫌なのか。そうなのか。柳生お前って奴は。嫌なら嫌と言ってくれれば良いものを。いやまあ面と向かって嫌だとか言われたらそれはそれで俺のハートがまたブロークン。俺のハートはガラスどころかあれだ。シャボン玉。ちょっと触れたらバァン。
 あ、もう駄目だ考えてたら逆に虚しくなってきた。ごめんよ柳生疑って。あああ駄目だ人肌が恋しい柳生不足で死にそうだ。家に帰ったらメールでもしてみようかしら。あらいやだ。これじゃまーちゃんまるで恋する乙女じゃないか。

「仁王」
「んーあー?」
「少し、話しがある。」

 つか誰だ。
 何も考えずに返事をしてしまったので、頭を壁につけたままごりごりと音を立てながら後方を確認する。ああ頭皮が、頭皮が悲鳴をあげてる。

「……さな、だ」

 珍しいことも、あるもんじゃのう。思わず頭を壁から話して何故か口癖になってしまったプリという意味不明な単語を口走ってしまった。


|| / Bkm




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