番外編 | ナノ

*

「友達を見学させたい?」

「あぁ。今日見学させてやりたいのだが、良いか?」

「…うーん…そうだね、蓮二の友達なら別に良いよ。で、その友達ってのはテニスはする気あるのかい?」

「いや、そいつは女子なんだ。やるとしてもマネージャーだろうな」

「え、女子?…蓮二の友達が?」

「そうだ」

「へぇ…珍しい事もあるもんだね」



始めは、蓮二に女友達と聞いてびっくりした。

その反面ちょっとだけ気になって、その友達の事を聞いてみた。
現在分かっているのは、物凄く人見知りが激しく男子が苦手らしい。そして天然だと言う。
それを聞いて一瞬、どうやって蓮二と友達になったんだろうと疑問に思った。
それを察した蓮二に、「俺が奴に興味があったからだ」と笑いながら言われて、何となく俺もその子に興味が湧いた。

その後の見学しに来ていた蓮二の友達は、部員の奴らが話しかけているのに、冷や汗をかきながら明後日の方向を見て、ほぼ無視でやり過ごす。
これは相当だな…と本気で思ってしまった。
だから多分、あの時話しかけに行ってたら絶対無視されてたかもしれないよね。


そして翌日の昼休み。
その日はたまたま弁当を持ってこなかったから、食堂に行った帰りだった。
その戻りに登った階段で、昨日見たような気がする女子を発見。思わず声をかける。


「あ、キミは確か蓮二の友達…?」

『………へ…?』


振り返った女子は、やっぱりそうで、よく見ると重そうな荷物を両手に持ってずるずると引きずりながら上げていた。
でも振り返ってすぐ顔をひきつらせ、軽く挨拶だけしてまた荷物を上げようとするので、持ってあげようかと言ったのだが拒否された。
俺はムカついたから、無理やり取り上げて上の階に登る。
彼女は重そうに持っていたが特に重くなかったので、どうせなら教室まで持って行くことにした。
その間話しかけて名前を聞いたりしたんだけど、ただ名前を聞いただけなのに嫌な顔をし思いっきり人見知りをされた。
だから、ここまであからさまな人ってなかなかいないよって注意したら、余計に嫌そうな顔をされる。
……うーん…なかなか手ごわい…。こんな人見知りな子とよく友達出来てるよな蓮二。


「お、幸村…と確か参謀の友達じゃな。なにやっとるナリか?」
「あぁ仁王」


仁王がひょっこりと現れた。
すると彼女…もとい小波さんは、また嫌そうな顔。
なんかその反応が逆に面白くなってつい笑ってしまった。
そんな俺に気づいた彼女は、はてなを浮かべながら見てきたので「何でもない」と言っておく。
そして仁王にも荷物を運ぶのを手伝ってもらおうと、俺の持っていた片方を渡す。けど仁王は体制を崩し荷物を落としてしまった。


「?…何やってんの?」
「…もしかして幸村はコレを二つもって階段を上がってきたんか?」
「そうだけど」
「…ありえないぜよ」


苦笑いでそう言われ、なんだか腑に落ちない。
そんなに重くないはずなんだけど…

それから何故か小波さんに説教をし始める仁王を宥めていたら、蓮二が来た。

小波さんもようやく安心出来たみたいで、すぐに蓮二の後ろに回り込む。
そのまま俺達の会話を体半分のりだし聞いていたが、「もっと構ってやってくれ」と言う蓮二の言葉に全力で拒否った。
俺達は全然構わないのに、小波さんは嫌だと言う。
何がそんなに嫌なのかわからないけど嫌だと言う。

見かねた蓮二は携帯を取り上げてメアドを赤外線で交換すると構えたが、少し考えてから何故か、アドレスだけ送るから受信をしてくれと言われてその通りにした。

なんてゆーか今の蓮二って、面倒が見良いを通り越して…母親に近い世話焼きだなって思ったから「お母さんみたい」て言ったら小波さんが小さく吹いた。蓮二はそんな小波さんの頭を軽く小突く。


「世話をかけてすまなかったな二人とも。コレは俺が教室に持って行く」
「大丈夫?」
「俺も手伝うぜよ」
「あぁ大丈夫だ。教室はすぐそこなのでな。一つは小波に自分で持たせる」
『…二つとも持ってくれてもいいじゃない。一つでも重いのに…』
「お前の荷物だろう」
『…柳くんってそういう所は冷たいよなぁ……重っ』


そうして、渋々と荷物の片方を受け取ってそそくさと逃げる様に立ち去っていった小波さん。

にしても…蓮二がいると結構普通に喋るんだ…。
なんだかちょっと羨ましいな。
それに小波さんて人見知りは激しいけど純粋そうだし、反応も面白いし楽しそうだね。


「お前さんも変なヤツを友人にしたぜよ」
『あぁ、まあアイツのデータは面白いのでな…小波も今は俺にしか頼れないという所では難点だろう。二人とも仲良くしてやってくれ』
「フフフ…ホントに世話焼きのお母さんだよね。その内ウザがられるんじゃない?」
「フッ…そうかもしれないな」
「じゃあ俺は兄貴かの」


仁王が兄貴?……蓮二はお母さんだし…それじゃあ俺はお姉さんかな。
家族ごっこか…。
うん、これなら小波さんの人見知り少しは治りそう。

ふふっ…彼女が妹なら思う存分可愛がってあげなくちゃね。
蓮二も俺に任せておけば安心だよ。


「なんの安心なんだ…。あぁ…よろしく頼む」


微笑してから後ろを振り返った蓮二は、まだ教室にたどり着けてなかった小波さんを確認し、ため息をついた後それを追いかけて行った。

それを見て俺は、ツンデレだとかツンデレじゃないとか言い合っている2人を見てなんだかんだで仲良しだなぁと思った。



「…よぅみたら参謀も楽しそうぜよ」

『そうだね。それに何だかあんな世話焼きな蓮二も珍しいよね』

「……幸村もなんか楽しそうナリ。また変な事でも思い付いたんか?」

「変な事ってなんだよ。楽しそうな事だよ」

「プリッ…あんまり苛めると嫌われるぜよ。ほどほどにしときんしゃい」

「はいはい。わかってるよ…ふふふっ」



ゾクッ

『!?……な、なんかまた急に寒気が……さむっ!』

「何だ、風邪か?」

『わ、分かんない。…でもやな予感しかしない…』

「…?」

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