08.更衣室はない
「「お疲れっしたー!!」」
『…お疲れ様です…はぁ…本当疲れた』
「ふふっ、お疲れ様鹿野さん」
ということで、マネージャー業初日が終わりました。やっぱり初日は覚える事やる事が多すぎて疲れた疲れた。早く帰ってお風呂入りたい。
そして今から更衣室に着替えに行くんですが、更衣室に向かっている途中の皆の背中を見ていてふと気づいた…さっきはみんなが着替え終わった後に部室で着替えたから大丈夫だったけど、今いったら完全に変態じゃないのかと。
部室とは別に4つ更衣室はあるらしいけど、準レギュと平部員がつかっているらしいから使えないみたいだ。しかしまあ部員200もいたら4室でも足りないんじゃないか。
『あの、華村先輩。一つ質問宜しいっすかね』
「ん、なぁに?」
『えーと…部活のときは着替えとか普段どうしてるんですか?』
「普通に部室だよ」
『えっ!?でもレギュラーの人達も着替えてますよねっ』
「そこは大丈夫。ちゃんとカーテンあるから」
『いやいやいや、そういう問題じゃないですって先輩』
やばい、もしかしたらこの人女性としての何かが欠けてるのかもしれない。
普通は入るとき男子の裸を見ることに抵抗を持たんといかんのですよ。けど気にする事なく部室のドアをあけ、奥のカーテンスポットへ行きカーテンを閉める準備をする華村先輩。
……なんかこの人、色々と凄いな。周りの先輩達も慣れてしまってるのか無反応だし。上半身裸なのに、女子がすぐそこに居るのに、着替えながら談笑している。
「鹿野さーん、早くっこっちこっち!女子はここで着替えるんだよー!」
『は…はい』
先輩が呼んで居るのに行かないわけにもいかないので、一応男子達の居る方を見ないように両手でカバーしながらカーテンの場所まで走る、着けば先輩はすぐにカーテンを閉めた。
「ごめんね。本当は結構前に跡部君が、更衣室ぐらいつくってやるとか言ってたけど…私だけの為につくって貰うのって何だか申し訳なくって。でも今日から鹿野さんも居るし、やっぱりつくって貰おうかな」
『そうなんですか。…まぁ流石に毎回レギュラーの人達の上半身見なきゃ行けないってのはちょっと参ります。一応女子ですし』
「やっぱいるよね更衣室」
華村先輩は困ったように笑ってから着替え始めた。
…しかしこの人は美少女な上に凄くええ人や…。どこか抜けてるけど気遣いもできるし、頭も良さそうやし、怪力疑惑はあるけど、イケメンだらけのテニス部をあさりに来たようでも無い。今の所非の打ち所が見つからないぐらいの良い先輩だ。
『華村先輩って』
「ん?」
『最初からマネージャーやる気だったんすか?正直、マネージャーとか面倒くさくないっすか?』
「うーん…始めはね、友達に一緒にやろうって言われたから入っただけなの。でもやってく内に楽しくなっちゃって」
『ふむふむ』
「キツいなって思ったりする事はあるけど、皆とお話ししたりお世話するの好きだから面倒くさいっていうのはないかな」
『…え、ええ人や、先輩ほんまもんの美少女っすわ…』
「え?急にどうしたの?」
性格まで美人ときたもんだ、もうコレはモテて当然だろう。
あ…そういえば侑士も惚れてるし。
「あっそうだ、メアド教えて?色んな連絡とかもそうだけど、鹿野さんと仲良くなりたいの…良い?」
『あ、はい。いいっすよー』
上目使いとかっ可愛いなこの人!こんなことされて嫌なんてよう言わんよ…。
てゆーか男子なら瞬殺やコレ。私も惚れるわコレ。
「なんだよっずりぃ紗耶香!俺にも教えろよ鹿野!」
『うわっ向日先輩!?着替え終わってるから良かったけどっいきなり開けたらダメですよ!』
「おお、わりぃ。それより教えろって」
『先輩…や、別に良いんですけど』
この人にはデリカシーってもんは無いのか。
何故か華村先輩と一緒にはしゃぐ向日先輩は、まるで女子みたいだ。何かノリが女子っぽい。てゆーか見た目も女の子…げふんげふん。
「それなら俺様の連絡先も送ってやる」
『えっ!跡部部長の!?そんなの恐れ多いっす!私なんかが部長のメアドとか持つとか!』
「俺様直々に教えてやろうって言うのに断んのか?アーン?」
『ひいっすみません!』
「せやったら他のレギュラーの分も貰っとき。マネージャーなら一応持っとらんとな」
『ちょっまっ、そういうのは連絡網的な紙とか後であるんやろ?いらんて』
「いやいや、いるやろ。何でちょっと嫌そうやねん」
メアド交換も強制かよちくしょう。
なんか…入学初日から良いこと無いな、マジで。
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