07.寝太郎さん捜索
という事で、再びテニスコートです。
戻ってきてから華村先輩にくっついて仕事の手伝いをする。
この人、見た目ふわふわした天然さんだけど、仕事はちゃんと出来る人らしい。テキパキと慣れた手つきで説明しながら作業する。
「あとね、タオルとかはその辺に置いてると洗ってないのとごちゃ混ぜにしていく人がいるから、使ってあるのはカゴに入れてもらうようにしてね」
『はい』
「えーっと…これで大体仕事の説明は終わりかな。後は暇だったら部室の掃除に行くとかだから、大丈夫だと思う」
「はい。じゃあとりあえず今から球拾いですよね」
「うーんと……あ、そういえばジロー君いない。ちょっと待ってて鹿野さん」
『?…はぁ』
華村先輩は跡部部長の所に駆け寄り、何か話してからすぐに戻ってきた。
「ごめんね、後一つお仕事あった。これはたぶん、部活がある日は大体しなきゃいけない事ってゆうか…今日は跡部君に許可とったから2人で探しに行けるけど、普段は私か鹿野さんのどっちか1人でしないといけないかな」
『??…探しに行くと云うのはどういう事ですか?誰かサボってる人でもいるんですか?』
「あ、ごめんね。説明が足りなかったね。まぁちょっと寝坊助さんな男子がいて…芥川慈郎君って言うんだけど、一応レギュラーなんだ。いっつもどっかで寝てて…とにかく探しにいって連れ戻さなきゃ」
『なるほど、芥川さんとやらを探しにいって連れ戻す作業っすね。了解です』
そして先輩について行き、学園内を歩き回る。木陰の辺りだったり、校舎裏だったり、噴水広場のベンチだったり、華村先輩が云うにはだいたいここらが芥川さんとやらのお昼寝スポットらしいのだ。
「うーん…今日は外じゃなかったのかな。次は校内行ってみようか」
『はい』
一通り回ってみても見つからないので、次は校舎を探す事になる。華村先輩は保健室と教室。私は図書室と屋上に探しに行くことになった。
私はとりあえず一番遠い屋上から先に行ってみる、が人気が全く無かったので図書室に行ってみた。………やっぱり居ない。ってことは先輩の方で見つけたかな。図書室からだと二年生の教室が近いし、行ってみよう。芥川さんとやらは何組かわからんけど。
「…くん…!お…てー!」
『…ん?』
二年生の教室の廊下を行くと奥から声が響いた。多分華村先輩の声だろうな、一応行ってみよう。
「もーっ起きなきゃダメだよジロー君。…部活始まってるよ!」
「んー…やだー……ねるC〜…」
「こら〜怒るよっ」
「もう怒ってるCー……あと30分ー…」
やっぱりだ。多分あれが芥川さんなんだろう。華村先輩は、椅子を2つ使って寝っ転がっているその人をバシバシ叩いて起こそうとしているが、30分と言った後すぐに寝てしまったみたいだ。叩いても無反応だ。
『華村先輩ー?その人が芥川さんですか?』
「あ、鹿野さん!良かった来てくれたんだ!起こすの手伝ってっ」
『え、あ、はい』
手伝ってって言われても……初対面の男子、しかも先輩にどうやって接すれば良いんですか。叩いて…は絶対ダメだろうな。
『あのー…起きてくださーい。部活しないんですかー?』
「ぐー…」
『………えーっと、どうしたら良いんですか。これ』
「しょうがない、秘密兵器を使うしかないみたいね。これ帰ってから食べようと楽しみにしてたんだけど……ねぇねぇジロー君。この前でた新作ポッキーもう食べた?」
「…んぅ…ポッキー…?」
「でもジロー君ならもう食べてるしいらないよね。私が食べ…」
「いるいる!ポッキーなら食べるCー!」
ガバッ
『わっ!』
芥川さんは、勢いよく起きて華村先輩の持っていたポッキーの箱を掴んだ。あまりに勢いが良すぎてびっくりした。そんなに好きなのかポッキー。
「ジロー君はポッキー大好きだから、見つけに行くときはポッキーは必ず持ってた方が良いかも」
『なるほど、芥川さんはポッキー好きっすね。メモメモ…』
「…はれ、あんはわえ?(あれ、あんた誰?)」
芥川さんはポッキーを口いっぱいに頬張りながら、私を見た。
『…えーっと今日からテニス部のマネージャーになりました、鹿野翠です。一応忍足侑士のいとこです』
「ほあー、おひはふのいほほ?なんへはんはいへんはなさないのー」
バリッバリッ
『…はい?』
「ジロー君、食べながら喋ったら何言ってるか分かんないよ」
「ん、…んぐ……だから、忍足のいとこなのになんで関西弁じゃないのって」
『侑士いたら使いますよ。ていうか早く戻りましょうよ』
「うん。はい、ジロー君の鞄だよ」
「んー…今日はおんぶないのー…」
「いつも重いっていってるでしょ。おんぶでコートまで連れて行くの凄くきついんだよ」
「Eー…じゃあ鹿野さんおんぶしてー。紗耶香ちゃんよりおっきいCー」
『おっきいって言うほどあんまり差は無いっすよ。まず芥川さんの方がデカいじゃないですか』
「だって、コートに着くまでに俺寝ちゃうかもだCー…おんぶしてたらそのまま連れてってけるじゃん」
『ちょ、ちょっと、マジっすか。む、無理ですってばっやめっ…』
ずしっ
『…っうあぁああい!おもっ!!』
本当におぶさってきた芥川さんは、全体重を私に掛けてきてずっしりと重い。…これは前に進めないパターンですよ絶対。だって動かないですもの。ビクともしないんですもの。
『せ、先輩、手伝ってもらって良いですか』
「うんわかった。じゃあ私左側かつぐね」
華村先輩は割と簡単に芥川さんを担ぎ上げた。…そういえばさっき、この人をおんぶしながらコートに連れてったって言ってたけど…まさか本当じゃないよね。あの小さくてか弱そうな華村先輩が自分より大きくて重い同い年の男子をおんぶしながら歩いたなんて、そんな事はないよね。
まぁこうして、芥川さんを見つけたのでまたコートに戻りました。着いてからすぐにベンチに置いて球拾いに行ったのですが…起こさなくて良いのかなと思って見てみたら、跡部さんが話しかけたら起きてたみたいです。
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