01.いとこ
〜♪
『…………んー…電話?……朝っぱらから誰や……ふぁあっ』
両親の都合で東京に住み始めてから一週間。やっと新しい自宅に慣れてきた今日この頃です。
そして今日高校の入学式。
私は一つ歳上の従兄弟、忍足侑士が通っている氷帝学園に行くことになった。
氷帝学園は金持ち校らしいけど、家は別に金持ちではない。まぁ、一般庶民である。
なので正直、クラスのセレブと話が合うかわからないので…もしかしたら友達とか出来ないかもしれないとか思って不安で仕方がない。そのせいで昨日はちゃんと寝れず、深夜2時にやっと寝れたので寝不足なのです。
「…はい」
《何でや!!》
『あぁ謙也か…声でかいねんお前…何の用やこんな朝早くに』
《俺が何でや言うとるやろがー!!東京行くて聞いとらん!》
『…何でもくそもない。父ちゃんの都合やんかそんなん』
《せやから俺は聞いとらんてさっきから言うとるやろがー!!翠のアホー!!》
『はいはい…(ホンマうっさいわ謙也)』
《何で四天宝寺やなくて氷帝やねん…。侑士か。そない侑士がええんか!?アホー!!》
『もーっ…アホアホうっさいなぁ!アホは謙也やろ!侑士関係あらへん!朝っぱらからしょーもない電話してくんな!もう切るで!!』
《ちょっ待ちぃ!まだ話終わってへん…》
ピッ
『…んあーっ…ホンマしょーもな…しかもまだ6時…今日入学式やっちゅーねん…しねっ謙也』
私はケータイをベッドに投げつけてもう一度布団に潜り込む。寝不足だわ6時に起こされるわありえへん。
…だいたい謙也は過保護すぎんねん。大阪にいた頃は、私が男子と喋ってるだけで怒りはじめて手が付けられなかったぐらいやし。怒る理由を聞けば、「悪い虫は追い払うっちゅー話や」とか意味の分からん事を、ニコニコと爽やかな笑顔で言っとった。しかもなんや誇らしげに。
そういえば中学いっても、家に来ては、好きな奴とかおらんよな、いじめてくる奴おったら俺にゆーんやで、とか何かいっつも同じ事しか言わんし…。ホンマアホやで。
ガチャ
「翠ー起きとんのー?下まで声聞こえとったでー」
『んー母ちゃん……謙也に起こされてん。せやから、まだ眠いし寝るわ』
「また謙也君かぁ、ホンマ好きやねぇ。もういっそ結婚したりや。謙也君イケメンやし、母ちゃんは大歓迎やで」
『なんでやねん。てゆーかいとこやんか…。絶対無理やろ』
「いとこって結婚できんねんで」
『ホンマかそれ。知らんかった』
「ホンマや。…せっかく起きたんやし、下降りてきぃや。二度寝はあかんよ」
『…んー…わかった』
母に言われてのっそりと布団から出る。
そして伸びをし、ゆったりと洗面所へと向かった。
―――――――――……
(リビング)
『…だいたい年上のくせしてアホすぎや。なんで私なん。身内やで』
「俺はえぇと思うけどなぁ。あ、翠は侑士の方が好きなんか?頭ええしカッコええもんな」
『好きちゃうし。まぁまだ侑士の方がマシやけどもいややわ』
「お前…そんなんばっか言うとったら彼氏出来へんで。身内にイケメン2人居んねんからどっちかにすればええやん」
『いややってば!…兄ちゃんも人のこと言えんくせに。19にもなって彼女出来たこともない童貞が』
「なっ…おまっそんな言葉どこで覚えたん!?……傷ついた。兄ちゃん超傷ついた。もう学校行きたないっ」
「純…。アンタ妹に童貞言われてんで。母ちゃん悲しい…」
「今傷口に塩塗りたくったで母親が。やばい、なんや涙出てきた」
「もうええから早よ行きぃや…。純は今日から普通に大学なんやろ?」
「へーい。オトンも仕事頑張りやー」
「おー」
『入学式って何時なん?』
「10時半や」
『…まだまだやん。謙也マジムカつく』
どーでもいいけど兄は19だから、今日から転校生と云う形で氷帝学園大学部に入学するらしい。
てゆーか2人して氷帝に入学して家の経済面は大丈夫なんだろうか。なんか、今になって心配になってきた。
〜♪♪
『…また電話。謙也か?…って侑士や』
「モテモテやねぇ翠。ホンマどっちかと結婚しぃや。」
『もうええって。…(ピッ)…はい。翠ですけどー』
《あぁ翠。入学するんやて?氷帝に。今電話で謙也に聞いてん》
『…せや』
《…なんやテンション低いなぁ。入学式やで、今日》
『…あんな、さっきその謙也からも電話あったんよ。せやから苛々しとんの』
《何やまたアホな事言うたんか、アイツ》
『言うたも言うた。6時に電話で何でやー聞いてへんーアホー言われて耳痛いしムカついた』
謙也のことやから、昨日寝る前に私んちの事聞かされて、朝に電話するつもりで寝たけど早く起きすぎたからいっそ今したるって思ってかけたんやな。
…スピードスターかなんや知らんけど、もうちょい考えて行動して欲しいわ。付き合わされるこっちとしては迷惑極まりない。
《相変わらずやな、謙也の過保護は。ホンマ翠の事大好きやからなぁ》
『知らん。もう謙也の話終わり。で、話は入学式の事だけか?』
《あぁせやねん。ただ久しぶりに声聞きたかっただけやから》
『はあ?…今日から学校でいつでも会えるやろ。意味わからん』
《はいはい。……あ、要件まだあったわ。入学式終わって、放課後んなったらテニスコート来てくれへんか?》
『テニスコート?…ええけど、何するん?』
《ええから、着いたら俺に声かけてな。もう切るで》
『んーわかった』(プツッ)
…なんというか…侑士とは電話するの久しぶりだったんだけど、なんか前よりエロボイスになってる気がする。たった一年話さんかった間に何があったんや。
「侑士君なんて?」
『放課後テニスコート来いって。なんやろ』
「侑士君もホンマ翠の事好きやなぁ。…父ちゃんあの二人なら何時でも受け入れたるで」
『父ちゃんまで何言うとんの。まだ高校生なったばっかやし。どんだけ先の話やねん』
「翠はツンデレっちゅー奴か。照れんでもあと1年すれば結婚できるやろ」
『もーうっさい。はよ行けって仕事ー』
prev /
next