柳side



小波が転校してきてから約2週間ほど経った。

初めは人見知りに自分も苦を感じていたようだが、今はどうでも良いという様子だ。(結局人見知りは治っていない)

そのせいで女友達はまだ一人も居ない。
ただ、男友達(?)は増えたらしい。
主にテニス部レギュラー陣だが。

その中でも精市とはよく会っているようで

…昨日だったか、「幸村くんに呼ばれた」と言って休み時間になった途端教室を飛び出して行った小波は、次の授業が始まるギリギリまで帰って来なかった。

後に何があったのか聞いてみると


「お姉様が怖い。助けて」


と、何度話しかけてもそれしか言わなかった。
…この辺りはあまり深く追求しない方がいい。




「あ、柳先輩!」


「ん?赤也か」


「晴乃先輩どこッスかっ」


「…小波ならまた精市に呼ばれていないぞ」


「また!?もーっ今日は俺んとこに来てくれるって言ってたのに絶対忘れてる…」




後は赤也だが、いつのまにか仲良くなっていた。
…呼び方もお互い名前呼びになっている。

小波によると「何でか名前で呼びたいって必死になって言うからさぁ……あ、ねぇ質問。赤也くんって天使?てゆーか事故装ってちゅーしちゃダメかな?」と真顔で言っていた。

質問に対しては無視だ。
なんかムカついたので「小波は変態」とノートに書いておいた。




「しょうがないッスね〜…だったら部長のクラス行ってくるッス」


「あぁ、それなら俺も行こう。ちょうど精市に用があったのでな」


「ういっす、じゃあ行きましょう」



――――――――――――…


「…何か騒がしいな…」

「そうッスね」



精市のクラスが近くなると、少々ざわつく廊下に人だかりが出来ているのが見えた。


「なんスかね、アレ」

「…うむ、俺が見てこよう」


人だかりの中心を確認しようと、ウロウロしていたら声をかけられた。



「何をしているんだ、蓮二」

「…弦一郎。いや、この騒ぎが何なのか気になってな」

「…あぁ、アレか」


ため息を吐いてげんなりする弦一郎は、大きく息を吸い込んだ。


幸村!小波!いい加減にせんかお前ら!

『ひぇっ…ごっごめんなさい!!(声でかっ!)』

「うるさいなぁ…真田は黙ってろって言っただろ」



…騒ぎの中心は精市と小波だったらしい



「黙ってられん!周りを見んかっ恥を知れ!」


「そんなの関係ないし。コレは晴乃と俺の問題でしょ」


「関係なくない!だいたい毎回お前の理不尽に振り回される小波の身にもなってみんかっいくら"姉"だからと云ってそれは」

「"姉"だから良いんじゃないか。それに嫌だって言わないだろ。ね、晴乃?」


『…はい。お姉様』


「顔が青ざめてるぞ!何をしたらこうなるんだ!?」





…どういう状況なのかつかめん。



『おかっ…お母さぁぁんっ!!(泣)』

「誰がお母さんだ」


俺に気付いた小波は、直ぐ様背中に回って泣きついた。



『お姉様がぁっ…お父さんも怒った顔が恐いよ!』


「お父さんと言うな
!恐いってなんだ!」


「また蓮二の所に行く…」


「晴乃先輩!見つけた!!」


突然、赤也が小波の後ろに回り込みタックルをする。


ドスっ!!!
『!?!?…っあ、赤也くん…タックルはやめれっ…ビビるし痛い』

「今日は俺とゲームする約束じゃないッスか!幸村部長ばっか構ってないで俺にも構って下さいよ!」

『やめっ苦しい!…てゆーか抱きつかないで!赤也くんのファンにイジメられるからっ』

「知らねぇッスそんなの!」

『し、知らねぇって……ってちょっわかった!わかったから苦しいっいたい!』

「赤也、離してやれ」

「うわっすんません!大丈夫ッスか?」

「大丈夫じゃないよ………それもこれも全部柳くんのせいなんだからね」

「…何故だ」



…結果論、最初は男子は苦手だ人見知りだと言っていたが、いざ友達が出来ると相手から依存される傾向にある。
まだ二人しか確認していないために情報としては浅いが…



『…さっきから何ブツブツ言ってんの?』

「気にするな。それよりもうすぐ休み時間が終わる時間だ、帰るぞ。あと精市…また後で用がある」

「あぁうん。わかった」

「え〜…もう終わりッスかぁ?俺まだちょっとしか先輩と話してねぇッスよぉ」

「俺もまだ話済んでないんだけどな」

「幸村はどうしてそこまでして小波を…」

「真田うるさい。早く自分の教室に戻れば?邪魔」

「邪魔とはなんだっ、もうお前達には付き合ってられんっ!」

『バイバイお父さん』

「お父さんと言うな!」


怒りながら帰っていった弦一郎。


「…つーか前から思ってたんスけど、そのお父さんとかお母さんとかお姉様って何なんです?」

『え、…たぶん家族ごっこ』

「…そうだったのか?」

『たぶん』

「たぶんじゃなくて、そうだよ」

『…そうなんだ』

「うわっなんスかそれ〜!超楽しそう!俺も入れて下さいよ!」

「じゃあ赤也は末っ子の弟」

「末っ子って…晴乃先輩意外に兄弟いるんスか?」

「仁王と柳生が双子長男次男で、丸井は三男。ジャッカルは従弟(笑)って感じかな」

「…丸井とジャッカルと柳生は勝手に決めただろう」

「だって考えるの楽しくってさぁ。てゆーかね、俺がお母さんでも良かったんだけど」

『お姉様、柳くんはお母さん確定だからポジション移動無しですよ』

「確定なの?じゃあ俺お姉さんで良いや」

「じゃあごっこの時は俺、先輩のこと姉ちゃんって呼びます!…姉ちゃんっ」

『(何コイツ萌える)うん』


「………楽しそうだなお前達…」



こうして見ると、家族ごっこのおかげか小波はだいぶ他の奴と喋れるようになったみたいだ。
幸村のお陰だな。後で礼を行っておくか。…何というか、本当に俺は小波の世話をする母みたいな思考になってきたと思う。


「ハァ……お前のせいだぞ小波」

『え?何が?』


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