『な、なんだ柳くんか……早かったね、図書室に行ってたんじゃなかったの?』
「借りていた本を返しに行っただけだからな…で、どうしたんだ?」
声の主が柳くんだと分かって安堵した。
「仁王があんまり小波さんをいじるから蓮二に怒られるんじゃないかと思ってさ」
「そんなにいじっとらん」
「別に怒りはしないが…というか寧ろもっとかまってやってくれ」
『ちょっ柳くん!?イジメ!?』
「え、いいの?」
「コイツかなりイヤそうぜよ」
「あぁ、人見知り克服の為に友人が必要なんでな。精市と仁王も"友達"になって貰えると有難い」
『や…柳くんっテニス部嫌だって言ったよね?ねぇ、男子苦手だって言ったよね?』
「うーん…俺は構わないけど彼女は嫌だって言ってるし」
「俺も別に構わん」
『や、だからっ嫌だって』
「…嫌だっと言っているが俺もテニス部で男だ」
『そっそうだけど…』
「小波、携帯を出せ」
『え?…あ…はい』
言われるがままスカートのポケットから携帯を取り出す。
「少し借りるぞ」
『…え』
すると持っていた携帯を即座に取られてしまった。
「精市、仁王、赤外線だ」
「あぁうん」
「プリッ」
『え…まさか』
柳くんは手慣れた感じで携帯を操作し、たった2、30秒ほどして私の手元へ携帯が戻ってきた。
ちょっ女子高生かっ!てゆーか柳くんのクセに携帯使いこなしてるし!
「二人にお前のメールアドレスを送っておいた。メールが来たらちゃんと登録しておくんだぞ」
『…赤外線じゃなかったの?てゆーか勝手にメアド送ってるし…………………もうっわかったよ…登録するからっ』
「なんか蓮二お母さんみたい…」
「そうじゃの…」
またお母さんみたいって言われてる柳くんは、幸村くんと仁王くんから荷物を受け取る。
「世話をかけてすまなかったな二人とも。コレは俺が教室に持って行く」
「大丈夫?」
「俺も手伝うぜよ」
「あぁ大丈夫だ。教室はすぐそこなのでな。一つは小波に自分で持たせる」
『…二つとも持ってくれてもいいじゃない。一つでも重いのに…』
「お前の荷物だろう」
『…柳くんってそういう所は冷たいよなぁ……重っ』
渋々と片方を受け取ってそそくさその場を逃げる様に立ち去る。
「あの子蓮二がいると結構普通に喋るんだ」
「友達だからじゃろ」
「そうだな。初日からしたら心を開いて来てはいるようだが…何せ男が苦手らしいのでな、口下手も災いして自分からは話しかけようとしない」
「見てればなんとなくわかる。…苦労するね」
「お前さんも変なヤツを友人にしたぜよ」
『あぁ、まあアイツのデータは面白いのでな…小波も今は俺にしか頼れないという所では難点だろう。二人とも仲良くしてやってくれ』
「フフフ…ホントに世話焼きのお母さんだよね。その内ウザがられるんじゃない?」
「フッ…そうかもしれないな」
「じゃあ俺は兄貴かの」
「それじゃあ蓮二がお母さんだから…俺はお姉さん?」
「なんで姉じゃ…」
「うむ、精市は姉だろうな」
「アハハ、じゃあお姉さんだから妹はちゃんと可愛がってあげる。だから安心して」
「なんの安心なんだ…。あぁ…よろしく頼む」
柳は微笑し、ふと後ろを振り返ってみる。まだ教室にたどり着けていない友人の背中を確認してため息をつき、それを追いかけた。
「まだ着いてなかったのか…」
『…だ、だって重いんだもん』
「仕方ないな、袋の持ち手を片方持ってやる…それなら少しは軽くなるだろ」
『……柳くんってさ本当ツンデレだよね。私を萌えさせてどうしたいの?』
「お前はツンデレに萌えるのか?」
『うーん…一応?…だからさ、柳くんはリアルツンデレって私の脳内にインプットしといたから…そこんとこよろしく』
「何がよろしくなんだ。…というか俺はツンデレじゃない」
『どうみてもツンデレですぅ〜』
「違う」
「なんだかんだで仲は良いみたい。あの二人」
「みたいやの」
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