『…もう絶対来ないからね』
「なんだ、もう怖じ気付いたのか」
『男子苦手だって言ったでしょ…』
「…俺も男なんだが」
『………ほ、ほら、柳くんは友達だから!変なことはしない人だってわかってるからさっ』
「…そんなに焦ることないだろ」
『ごめんなさい』
部活が終わってみんなテニスコートの清楚をし始め出した頃、帰ろうとした私までそれを手伝わされるハメになった。
それででっかいブラシを柳くんに無理矢理渡され、「ここの端から向こうの端まで掛けろ」という命令で仕方なく重いブラシを持ってコート内を引っ張り歩く。
コレ一人でやんの?とか思っていたら柳くんも間をあけて隣から掛けていた。その奥からは赤也、そのまた奥から真田が来ていた。
「てゆーか柳先輩だけズルくねぇっスか?なんで人見知りの小波先輩がそんな喋ってくれるんスか。俺らは無視なのに」
「……だそうだ。赤也がお前と喋りたいと言っているぞ」
『…え………や、うん…努力する』
「努力ってなんスかー!ただ喋るだけでいいのに!」
「赤也っうるさいぞ!綺麗に掛けんか!それからお前が地団駄踏むから砂ぼこりが舞ってる!落ち着け馬鹿者っ」
「わぁっすんません!」
『はは…(赤也可愛いなこのやろー)』
「…というか小波、俺は友達を作れと言ったじゃないか。せめて一人ぐらいは出来るだろうと思えば、誰とも話さないとはどういう事だ」
「もう…またそればっかり。…いいじゃない別に…友達なんてその内出来るよ……たぶん」
「たぶんって…そんな考えだから出来ないんだ。俺が「友達」になったのも奇跡みたいなものじゃないか」
『…はぁ…まあ、そうですね(ほぼ強引にだったけど。…ホントはテニス部とからむつもり無かったのに…)』
…ってそうだよ、私平凡ってアレには書いたはずなのに…なんでこんな思いっきりキャラに絡む方向になっちゃったわけ?
しかも転入してから2日目でこんな…。まさか顔だけ平凡なんてことは…ないよね?
そんなのって無いよ、神様……私は平穏な生活おくりたいだけなんです。
「まぁ良い。それより、見学は楽しかったか?」
『ん?…どうしたの急に』
「せっかく見に来させたのに、疲れたんじゃないかと思ってな」
『…うーん……テニスの見学は楽しかったかな。ファンの声と目の前で騒がれたのはイヤだったけど』
「皆物珍しさに騒いでいただけだ。次見に来る時はゆっくり出来るんじゃないか?」
『次は無いからね絶対』
「次は外側から見ていけばいい。それなら絡んで来る事はないから大丈夫だ」
柳くんがそう言った時に丁度端っこについた。
『…暇があったらね』
「それからそのユニフォームはちゃんと洗ってから返せ」
『わかってるよ…』
ざっ
「あぁっ小波先輩!次会った時は俺とも喋ってくださいよねっ」
わざわざ走ってきてまで私を遮った赤也。
『わっ!………う、うん…努力…します…』
「だから努力ってなんスか〜!ただ話すだけで努力必要ないっすよ!」
「小波には努力が必要なんだろう」
「なんスかそれーっ」
『…』
こうして、なんとかコートのブラシ掛けも終わったのでそそくさと帰った。
途中誰かに声をかけられた気がしたけど無視して。
ウチに帰りついてからふと携帯を確認したら柳くんからメールが来ていて
「帰る時は声くらいかけろ。テニス部全員にメアド送るぞ」
と、何故か怒ってらっしゃった。
なんつーか…私にしたらほぼ脅しだ。
それは困る、とすぐ謝りのメールを入れたら。
「仕方のない奴だな…」
と呆れぎみに返されました。
…なんかゴメンよ柳くん。
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