そして数分後。
一旦落ち着いたので少しボーッとしていたら、若菜ちゃんが話しかけてきた。


「ねぇ晴乃ちゃん」

『何?若菜ちゃん』

「なんか丸井くんと仁王くんが呼んでるけど」

『…今忙しいから、後でって言って』

「どこが忙しいんだ?明らかにボーッとしていたぞ今」

『ちょっ柳くん急に出て来こないで。ビビる。…だって、どうせ今行ったら面倒臭い事になるに決まってるもん』



それにそろそろ帰るんだろうとは思うけどまだ四天宝寺の人達もいるし。絶対なんかする気に決まってる。
だから絶対に行くもんか、…と思っていたのに奴らはニヤニヤしながら私の所へやってくる。



「まぁま、んな遠慮しねぇでこっちで休憩しろぃ」

「どうせ今から休憩なんじゃろ?なら俺達と話しすればいいぜよ」
グイグイ
『ちょっと、遠慮とかしてないし勝手に人の休憩時間を早めるな。…ちょっやめっ引っ張んないで!てゆーか早く帰れ!何時まで居る気なのアンタら!』



引っ張られて無理やりこの人達がいた席に連れて行かされてしまう。そして丸井くんと仁王くんの間に座らされ、逃げられないように両腕をがっちりと掴まえられる。その間四天宝寺は頭に?を浮かべながら私達の方を見ていた。



『なにすんの。私話す事なんてないんだけど』
「んだよ、ちょっと挨拶すりゃあ良いだけだろぃ」
「あと世間話とかすればいいだけぜよ」
『挨拶はともかく、世間話ってなんなの。私この人達のこと知らないよ(知ってるけど)』
「まあ俺達に合わせるナリ」
『ちょっとっヤダってば!離せっ!』


「その子さっきの子やんなぁ。君らの知り合いなん?」


じたばたもがいていたら白石が話し掛けてきた。



「おう、俺らのダチの小波」

「ウチの参謀の親友でもあるぜよ」

『…親友…なの?』

「親友だろぃ」
「親友じゃろ」

『マジか。知らなかった』

「とりあえず挨拶しとけって連れてきたんけどさ、コイツ人見知り激しいから逃げようとするんだよ」

「そうなん?けど柳くんに女友達ってなんや想像つかへんな。結構珍しいもんなんとちゃうか?」

「しかも親友て言うてたで。相当仲えぇんやろな」



白石と謙也が私に興味を持ち始めたみたいで、ジロジロと見てくる。



『っ…ねえっ離して!私まだ仕事あるってばっ休憩はまだ先なのっ!』
「まあ落ち着けって。俺のあんみつやるから食えよ」
「俺の団子も1本やるぜよ。お前甘いもんすきじゃろ」
『…………………わかった』



「この子甘いもんあげたらすんなり大人しくなっとんで」

「さっきまで暴れとったのにねぇ。やっぱり女の子は甘いもの好きやね。あたしと気いあいそうやわぁ」

「浮気か小春!女子なんて俺は許さんど!」

「男やったらええんすか」

「男も許さんに決まっとるやろが!」

「…何すかそれ。矛盾してますよユウジ先輩」



何か急にユウジが激突し始めたけど、それをお構いなしに小春が私の所へやってくる。



「ねぇねぇ小波さん、あたしとメアド交換してくれへんかしら。あの柳くんの親友なんて、かなり興味あるんよー」

『え……あ…はい…や、親友…いや、えっと』

「因みに下の名前も教えてくれると嬉しいんやけどぉ」

『…………………………晴乃です』

「…何今の間。ま、ええわ。可愛い名前やね、あたしの事は小春でええよー晴乃ちゃん」

『は…はぁ』



という事で小春とメアド交換しちゃいました。
すると、何という事でしょう。うしろのユウジの顔が恐ろしい事になって来ました。…恐ろしい。小春と仲良くしたら殺されるんじゃないの、これ。まじ般若だ。



「ん…そういえば千歳どこ行ったんや?」



突然小石川が喋った。
すると四天宝寺メンバーが一斉にそっちに向き、一時停止する。



「え……さっきまでおったやろ?」

「そういえばおらんな、今まで気づかんかったわ。俺はてっきり銀の後ろに着いてきとるもんやと思いこんどって…」

「いや、ワシの後ろには誰もおらんかった」

「結構前からいてへんかったっすよ。…多分」

「どっかではぐれたんとちゃうの?」

「絶対そうや。千歳ここ来たときからふらふらしとったで」



そしてざわつき始める四天宝寺。

確かに一人足りないとは思ってはいたけど、皆してはぐれたのに気づかないとかすごいな。どんだけ気配消すのうまいの。無我のなんちゃらとか才気煥発のなんたらとか云うの使えるぐらいだから、かなり存在感ある気がするけど…。



「千歳ならさっき、ふどーさんとこの金髪の兄ちゃん見つけたーとか言うて外の出店の所に行っとったでー」

「ふどーさんちゃう、それ不動峰や。…ってホンマか金ちゃん。何でそんとき教えてくれへんねやっ」

「だって「すぐ戻るたい」って言うたし。たこ焼き食うてたから喋れんかってん」

「………まぁしゃーないわな。千歳が居らんくなるんは何時もの事やし」

「その辺廻っとれば会えるやろ。もうそろそろ出ようや」
「…せやな」



どうやらやっと出るらしい。
皆各々帰る支度を始めだした。



「何だもう出るのかよぃ」

「それなら私達も他を廻りましょうか」

「もうすぐで午前中も終わるし、今のうちに赤也の所も行っとこうぜ」

「プリッ…せやの、あんまり長居し過ぎるとコイツが嫌がるきに、俺達もそろそろ出るぜよ」

『…仁王くんと丸井くんが無理やり引っ張るからイヤだったんだけどね』



そして、立海の人達も四天宝寺後にぞろぞろと会計をすませていく。やっと静かになるよ…全く。

四天宝寺の帰り際、小春が私に「メールするわねぇ〜」とか言いながらニコニコ手を振っていたので、なんとなく振り返したら、やっぱり隣にいたユウジにかなり睨まれた。何あの顔こわ〜。…完璧敵視されてるよ私。

立海の4人組は、柳くんと少し会話してからどっかに行ってしまいました。…私には一言なにも無しッスか。何だよちくしょう、寂しいだろうが。



「小波」

『ん…何?柳くん』

「いや、いつもより頑張ったんじゃないかと思ってな。良く逃げないで我慢したな」

『…だ…だって、あの2人に掴まられてて逃げられなかったし…あんみつと団子もらったから動くに動けなかった』

「それでも前よりは少し進歩したんじゃないか?…最初は逃げてきたが、あの後は一応嫌がってはいたようだが逃げて来なかった。俺はこの少しの進歩に感動したぞ。良くやったな」
ぽんっぽんっ
『!?…………ど、どうも。…ってそんな事で感動するとかどんだけお母さん思考なの』



柳くんは、美しい微笑みで私の頭を二回ぽんっぽんっと撫でてから仕事に戻ってく。

正直今ので私は、『何今の!ドキッとするから止めろ!萌えるだろうがああああ!!柳くんの天然タラシ野郎!!』…って状態なのですが、心の中でセーブして平静を装った。そりゃ今爆発したら完全に変人なんでね。

あー…油断してたなぁ。


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