それから急にテンションが上がり出した赤也くんは、逆に私の腕を引っ張って会場の方へと進む。

そしてドアを勢いよく開けて、すぐ中の皆に謝ってから自分から練習しようと言い出した。



「なんだい赤也。ヤケにやる気があるみたいだけど、何かあったのかい?」

「別に何もないッスよ?それより早く練習しないんスかっ時間ないッスよ!」

「誰のせいだっつーの…」

「調子のいい奴ぜよ」

「全くしょうがないですね…」


皆少し呆れた様子だったが、持ち場に向かっていった。そして練習を始めたので、私は退散することにしたんだけど柳くんが肩を掴んで引き止めてきた。



「もしかして、赤也の機嫌が良いのはお前のせいだな?」

『せいって何せいって。…や、なんか海原祭一緒に廻るって話になって、それから急にテンションが高くなったからさ』

「そうなのか。…それよりもう帰るのか?」

『うん、劇見に行くつもりだし良いかなって。楽しみがなくなっちゃうじゃん?』

「そうだな。だが俺達も後20分で帰るぞ。少し待てば皆で一緒に帰れるだろう」

「えーみんなと帰んの?なんかやだー」



「なんだよ小波、お前もう帰んのか?」

「どうせすぐ終わるんじゃ、待っとれば良いナリ」

「そーっすよ!一緒に帰ろうぜ先輩っ」

「お前らそこ危ねぇぞ。こら赤也、幕にぶら下がんなって」



舞台袖の幕の隙間から顔を出す丸井くん達をジャッカルくんが注意する。そして後ろにいたらしい真田くんが拳骨を食らわし、ブツブツ言いながら袖裏に引っ込んだ3人。



「フッ…奴らもたまには小波と帰りたいんだろう」

『べ…別に良いけどさ。私外で待ってるから』

「晴乃」

『…ん?何?幸村くん』

「入り口にファンの子達からの差し入れとか置いてあるから整理しといてくれないかい?」

『何で私が…』

「お礼にどれか晴乃が好きな物貰っても良いから。よろしく頼むよ」

『…はーい、分かりました』



渋々とホールの入り口にある差し入れの山へと向かう。
…何というか…イジメの件があってから皆ちょっと優しくなった気がするんだよな…柳くん以外。少し前までは粗末な扱いだったのに。何だよ…どう反応すればいいか分かんなくなるじゃんかよ。



『まぁいいけど。……ってうわぁっ…良くやるよねホント。こんな量どうやって持って帰んの』



入り口の差し入れの山に着いてから、少し休憩する。
ふと携帯を見ると桃城くんと不二くんからメールが来ていた。実は桃城くんからは割とどうでも良いメールがよくくるのでしょっちうやり取りをする。不二くんは気まぐれなのでたまになんだけど、サボテンの写メだったり風景の写メだったり、だいたい写メが添付されたメールがくる。


『えーっと不二くんは…明日の立海の文化祭、みんなで行くことになったよ。楽しみにしてるね。…そっか青学は来るんだ』


あ、写メ貼ってある。
………今日のはちっちゃいサボテンだ。ピンクの花が咲いてて可愛いなぁ…なんだか癒される。不二くん効果か。保存保存っと。


『桃城くんは…海原際だっけ、あれウチ行くみたいだぜ。そういえば神奈川って何が旨いんだ?クラゲ?…クラゲ?』

何故クラゲ?…あぁもしかしてクラゲ煎餅の事を言ってるのか?…あれ食べたこと無いから分かんないんだよな…。てゆーか毎回桃城くんって食べ物の事ばっかりなんだけど。ホント食いしん坊だよなぁ。

とりあえず返信してから、差し入れの山の整理を始める。

えーっと…これは幸村くん、これは仁王くん、これは柳生くん、これは赤也くん…これは名前なし…………………ってめんどくさっ20分で整理出来ないっつーの!だいたい差し入れいるほど練習しないっつーの!!馬鹿か!
んもーっ………ん、なんか手紙も紛れてる。ラブレターかこんちくしょうめ。…なんかムカツクから見てやる。



『何々、……柳先輩へ、好きです。入学式の時初めて見たときから好きでした。もしよかったら連絡先書いておきますのでメールください。まってます………おぉふ…』



柳くん宛かよ…。しかも連絡先も書いちゃってる…絶対送んないってこれ。何考えてんだこの子。…しかも自分の名前書いてないぞ。大丈夫か。
…まぁ、一応柳くんの所に分けとこう。

その後も何度かラブレターが紛れ込んでいてちょっと困った。これはラブレターだけで分けた方が良かったかな。


しばらくして、大体片付いた辺りでみんなが来た。そして何故か皆私の頭をポンと軽く撫でてから自分のを取りに行く。



『…ちょっと、何で皆私の頭触るの。気持ち悪い。ちょまっ赤也くんはダメ』

「えー、良いじゃないっすか」

「気持ち悪いはないぜよ」

「良くやったなって意味だろぃ。なぁ?」

「そうそう。ありがとう晴乃」


『………………いや…別に』



何だよマジで。照れるわ。

そしてはみ出した名前なしの中から、ちょっと気の毒だけどケーキの箱を一つ取ってからみんなの後を追う。残ったのはとりあえず他の部員が取っていくみたいだ。
…まあ捨てるのももったいないしね。



『幸村くん、今ね不二くんと桃城くんからメールあったんだけど、青学くるんだってさ』

「そっか。そういえば四天宝寺と不動峰は来るみたい。他はまだ分からないけど」

「氷帝も来るらしいぜぃ。昨日ジロくんからメールあったし」

「後の六角とルドルフ、比嘉中からの連絡はないな」

「来たかったら来るだろ」

「しかし、比嘉中辺りは来ないでしょうね」

「そうだな。招待されたとはいえ焦って来る必要もないだろう」



こうして、準備期間は終わりました。
赤也くんと廻る約束したし、食べ歩きしたいかも。
何だかんだで、今まで会ったことの無いテニプリキャラの人達が見れるかもしれないんだし、こっそり写メだけとって逃げよ。…あ、そうだった。挨拶もしないといけないのか。面倒くさいな。


まいっか、明日が楽しみだ。



next.


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