海原祭前日。
今日は準備期間の最終日とあって、周りは殆ど文化祭そのものになってます。
ウチのクラスもほぼお店の雰囲気は完成して、あとは衣装(和服)のサイズ合わせと着付けの練習、食材の発注のみになりました。


『ヒラヒラエプロンもみんなの分あるんだね…。なんか、たった2日間しか無いのにもったい無い気がする』

「でも記念になるし、可愛いしいいんじゃない?後で写メってあげる。あ、襷やってあげようか晴乃ちゃん」

『ありがと。じゃあ若菜ちゃんも撮ったげる。ついでに柳くんもとってくる』

「柳くんの和服って割と珍しいよね。撮った奴私にもちょうだい」



そして着付け終わったあとお互い写メって、若菜ちゃんが他の友達も撮ってくると言って居なくなったあと、私も柳くんの所に行くことにする。因みに私達女子は空き教室で着替えてました。
けどまだ着替え終わって無い男子がいたらアレだから、こっそりと中を確認してから教室に入る。…まあ、ちょっとずつ女子が戻って来てるので大丈夫だろう。…えーっと…柳くんは……あ、いた。よし来たっ激写だ!



『おーい、柳くーん』

「…ん?」

(チャラン♪)



振り向いた隙に撮ったらいい感じに見返り美人に取れた。流石柳くん、和服似合ってるな。あぁ、男子はヒラヒラの白エプロン付けないのか。残念。でも襷掛けが様になってて羨ましいよ。



「…お前…」

『よっしゃーっ柳くんの和服とったどー!保存保存っと』

「やめろ。…俺を撮ってお前に何の得があるんだ」

『いいじゃん。みてニヤニヤするだけだし』

「…良くない。消しておけ」

『いいじゃんケチっ!』



私がぶーぶー文句を言うと、不快そうに睨んできたので仕方なく削除する事にした。
…あーあ、もったいないなぁ。

それからしばらくして、みんな徐々に作業を始め出した。そして柳くんも発注作業の手伝いに行ってしまった。
よく見たらいつの間にか若菜ちゃんも戻って来てたみたいだ。今度は男子を撮り始めている。

私もぼーっとしてたらダメだし、廊下の飾り付けの手伝いしようかな。



…キャーッ…

ざわざわ…


『…ん?』



何かA組方面の廊下がざわざわしてる。女子の黄色い声も混じっているので、どっかのイケメンの仕業かな。

………ってなんか女子の声がだんだんコッチに近づいて大きくなってきてるんだけど。もしかしてコッチに来るのか。


「キャーッ!」
「幸村くーんっ!!」
「かわいいー!」
「こっちみてー!!」


『あぁ…』


なんだ幸村くんか…。
よく見ると奥から、白装束の幽霊のかっこうをした幸村くんらしき人が走ってくるのが見えた。通った教室から写メる音やら、キャーキャー言ってる女子の声がする。……てゆうかあれって可愛いのか?血のり口から垂れてるけど。見た目とか真っ白だけど。



「あ、いた!晴乃!」


『ビクッ……え?な、何?』



幸村くんが私に気づき、声をかけてきた。しかもなんか今日は機嫌が良いのか超ニコニコしてる。

…てゆーかちょっと、こんな人の多い所でそんな目立つ恰好をしたまま話しかけないで下さい。
てゆーか血のりのせいで怖いです。なんか血のり妙にリアルなんだけど。



「みてみてこれ面白くない?古典的だけど。血のりもつけてもらったんだ」

『…へぇ…』

「何その反応」

『す、すんません。幽霊っすよね、すごいっす』

「でしょー?今日は機嫌が良いから晴乃も写メしても良いよ」

『マジっすか。じゃあ遠慮なく』


許可が降りたので遠慮なく撮る。…何か今日はノリノリだなぁ…幸村くんも楽しみなのかな海原祭。なんか可愛いかも。



「蓮二は?」

『柳くんは、メニューの食材の発注を手伝いに行ってるからいないよ』

「そっか、じゃあ職員室かな。さっきA組とかB組にもいって見せてきたんだ。真田達に」

『そうなの?』

「うん。後はジャッカルと赤也にも見せにいくつもり」

『……みんなに見せに行くつもりなの?』

「だって、準備ほぼすんでて暇だからね」

『暇なんだ』



幸村くんはじゃあね、と手を振ってからジャッカルくんのクラスの方へ行ってしまった。

…なんだかんだで中学生なんだよな、学校行事ではしゃぐなんて可愛いよ幸村くん。

はしゃぐ後ろ姿が可愛い過ぎて、写メりたくなったので、許可はないけど撮ってしまいました。…幽霊のかっこうなのがあれだけど。

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